スプリッターかスライダーであれば、田中将大がマイク・ナポリに打たれなかったという保証はない。

しかし同点の9回2アウト、ランナーがいない場面で、キャッチャーのブライアン・マッキャンが要求した鋭いスプリッター、そして食い込むスライダーに首を振ったヤンキースのエース田中は、自分の直感を疑わなかった。

そして右打者のナポリが、ファストボールを捉えてライト側フェンスの向こう側まで飛ばした時にレッドソックスは、ソールドアウトのヤンキースタジアムに集まった48,433人の観衆の目の前で2対1の勝利を手にした。

「スプリッターとスライダーを要求されたんですけど、両方とも首を振りました」田中は通訳を通して語った。それはナポリが、カウント1-2からの96マイルのファストボールを、ライト側スタンドの隅に打ち込まれたのを目撃した後だった。「外角に強い球を投げようと思いました」

4回には91マイルのスプリッター、6回には88マイルのスライダーで空振りを奪っていたナポリに対する田中の計画は、カウント2-1にして変化球を投げることだった。しかし、そうはならなかった。

「96マイルだったし、彼は、全力で投げていた」マッキャンは言った。「田中の投球に間違いはない。彼は望んだようにすべてをコントロールしているし、素晴らしい投球だった」

テレビカメラと音声マイクは、田中の考え方に対するナポリの疑問を拾った。

「なんてバカなんだ! スライダーで俺から三振を奪っていたのに」ダグアウトに向かうナポリは言った。

9回を投げて被安打7、2失点だった田中の素晴らしい投球は、8回を投げて被安打5、無失点だったレッドソックスの左腕ジョン・レスターに負けていなかった。9回は上原浩治が完璧に抑えて17セーブ目を挙げ、ヤンキースの連勝は2で止まった。

打者有利なこの球場でこれまでに8度の先発をしていた田中は、逆方向へ強く打てる打者に挑戦するのは危険なことを理解していなければならなかった。

「確かに、少し狭い球場ですから、そういうことはあるでしょうね」米国にきてから初めて連敗し、11勝3敗となった田中は言った。レッドソックスのもう1点は、3回1アウトでデビッド・ロスが放った本塁打によるものだった。

田中は、ア・リーグ東地区首位のブルージェイスから2ゲーム差に離されたのは、自分のせいだと思っているかもしれないが、それは間違いである。前回の田中の登板で得点できなかったヤンキースは、彼らのエースの2試合で1点しか得点していない。

5回までレスター(9勝7敗)に対してヒットを打てなかったヤンキースが、3回に得点できたのは、ショートのスティーブン・ドルーの守備エラーのお陰だった。6回の3本のシングルヒットもブレッド・ガードナーが二塁への盗塁に失敗したことで、得点につながらなかった。

8回が終わってレスターが降板した後の9回のヤンキースは、カルロス・ベルトラン、アルフォンソ・ソリアーノ、そしてマッキャンの打順だった。

精彩に欠けるベルトラン(35打数6安打)は三振し、代打のイチローは、センターフライに倒れた。4打数無安打だったマッキャンのこの日2つ目の三振で、試合は終わった。

田中によれば、彼がマッキャンに首をふることは「時々」あるが、土曜日の夜にそれを何回したのかは思い出せなかった。彼が知っていたすべてのことは、その本塁打が全てを変えたことだった。

「ホームランを打たれたのは、考えられる限りで最悪の事だと思います」

田中は言った。

参考:NYPOST.com