球界で最も速い男に、なぜ一塁へ、ヘッドスライディングをするのかを簡単に説明してもらおう。きっと、こちらが黙ってしまうような深い理由があるに違いない。

「それをすると、遅くなるんだ」ビリー・ハミルトンは言った。
 
ホームからファーストまで、日常的に約3.8秒で到達できる選手が遅くなるようなことは、おそらく勧められるようなことではない。そして、近年行われてきたいくつもの科学的な検証(最近のESPN Sports Sciencesでは、一塁を駆け抜けるのとダイビングするのでは、0.01秒の差があることが分かった)は、ハミルトンの主張を裏付けるものとなっている。

それにもし、その2つの選択肢にかかる時間が同じだとしても、駆け抜けるのよりもダイビングの方が、基本的にケガのリスクが高い。

「問題はそれなんだ」ブルージェイズのルイス・リベラコーチは語った。「スライディングのタイミングが遅すぎると、ベースで指がつまったり、ベースを超える時にケガをしてしまうんだ」

加えてケガの問題に対する科学的な検証では、熱中している時の本能的な行動によって、それは増加する傾向がある。何かを見て、それをしようとして、そしてそれを行なう。それは、私たちがしていることである。私たちは、子供の頃にお菓子を手に入れようとする時から、年をとってからソファーに座ってリモコンを取る時までのすべてがそうである。私たちは、それをしなくてはならないと考え、そして行動するのだ。

メジャーリーグの選手が、本能に基いて動いた時にケガのリスクを恐れないことは、これまでに何回も証明されてきた。

ジョシュ・ハミルトンが、故障者リスト入りすることになった親指のケガは、その典型である。そしてこれは、2014年で最も典型的な本能が招いたケガといえるが、これが最後となることは、まずあり得ない。

「彼らに"するな"とは言える」ロイヤルズのネッド・ヨースト監督は語った。「だけど彼らには闘争心があって、それに反応するんだ」

選手の中には、一塁へのヘッドスライディングをしてしまう人がいるという前提で、物事を考えてみよう。ではそれに、適切な方法はあるのだろうか? そしてそれは、ケガのリスクを軽減してくれるのだろうか?

それとも、そんなことは関係なく、それはすべてにおいて、単に愚かな行為なのだろうか?

アスレチックスのベテランであるニック・プントは、決して一塁へのヘッドスライディングを推奨しているのではない。しかし彼は、「スライディング」と「ダイビング」の間には違いがあると断言する。彼が地元紙に語ったところでは、ダイビングはあり得る手段である。それは地面と体の摩擦によって、体のスピードを落としてくれるからだ。そして彼は、「ベースに届く時に指を上に反らせて、親指はしまっておくこと」でケガを避ける事ができると語った。

プントが、自分の意見が100%正しいと言うことができるのは、彼が一塁へのヘッドスライディングを愛していることを神様でも知っているからである。昨年9月のドジャース戦でセンター前ヒットを打った彼は、ボールが内野に帰ってくるのかも確認せずに、それを行った。

しかし球界にいる他の選手たちが一塁へヘッドスライディングをすることの「適切」な理由を探していた私は、期待していたそのものを得ることができた。

それは、一応は賛成できるものであるが、そうでない部分もある。

「一塁へスライディングする唯一の理由は、タッチを避けるためだ」パイレーツのリック・ソフィールド走塁コーチは語った。「もし横にそれた高い送球が来た時にタッチを避けたければ、私はそれをする。ただしスライディングは、ベースに到達する最も速い手段ではない。私はタッチを避けることができると思わない限り、一塁へスライディングすることはない」

しかしそれでも、現実としてケガのリスクはある。昨年のホワイトソックスとの試合で、インディアンスのマイケル・ボーンは、一塁線へゴロを打った。それをつかんだアダム・ダンは、左腕のリリーバー、マット・ソーントンへトスをした。そしてボーンの走路上にソーントンのグローブがあったために、ボーンは地面へダイビングすることで、そのチャンスをものにしようとした。

「タッチをかいくぐってセーフになるために、そうしたんだ」ボーンは語った。「つまり他に方法がなかったから、それをしたってこと」

スライディングをしたボーンに、何が起こったのだろうか?

「手を踏まれた」頭を振りながら、彼は言った。「僕が望んていた結果とは、少し違ったね」

右手中指に裂傷を負ったボーンは、1か月近くを欠場することになった。

「僕は、もうしない。プレーオフでもない限り」

この意味が分かるだろうか? 指を5針も縫い、23試合も休んだボーンは、10月の大切な試合であれば、再び一塁へのヘッドスライディングも辞さないのだ。そのゲガが、残りのシーズンに影響をあたえるかもしれなかった一方で、そのプレーは、1位を目指すチームに勢いを与える結果となった。

結局のところ、ボーンが内野安打でセーフとなったからである。

「それは、闘争心に火をつけるんだ」ソフィールドは言った。「それは、少しでも鼻を前に出したい競走馬のようなもの。ヘッドスライディングは、彼らの心をより闘争モードにするんだよ」

論理的に言えば、ヘッドスライディングをする時には、少しでも良い結果を生むために、守備の位置と送球がどこから来るのかを元に走者が行動を考える必要がある。そしてこれまでは、いろいろな選手の話によれば、ヘッドスライディングは、一塁の審判の注意を引くことでランナーが有利になることがあった。しかしビデオ判定が導入された今、その効果は少なくなったと言えるだろう。

そしてもう1つ、弁護の余地がない一塁へのヘッドスライディングの利点がある。

見た目が、かっこ良いのだ。

「時には、そういう選手もいる」ブルージェイズのホセ・バティスタは言った。「一塁へスライディングをすることで、間違えた頑張り方をする人がいることは分かっている。頑張っているって見せたいんだろうね。でもそんなことをする人は、多くないよ」

他の塁でのヘッドスライディングに科学的な根拠がある中で、ベースを駆け抜けることができる一塁は、同じ様に論じることはできない。そしてバッティング・グローブでつかむことができず、足の速い走者の何人かがしているような親指を防御する手段は、バッターボックスから走り出す選手には、使うことができない。

「一塁での際どいプレーでは、ヘッドスライディングする前に頭を使え」アマチュアとマイナーリーグで共通の教訓である。

「したくなっても、それはしてはいけない」ヨーストは言った。

参考:MLB.com