田中将大にとっては、強烈な第一印象を与える唯一のチャンスだった。

そして彼は、それにほとんど成功した。

ニューヨーク・デイリーニュース 金曜日は、トロントの本拠地開幕戦だったにも関わらず、ロジャース・センター中の話題は、地元ブルージェイズに対するものは、ほんとうにわずかだった。

試合前のイベントとその華やかな雰囲気は、ホームチームのためのもので、ファンが失望に打ちひしがれる前に、毎年恒例で彼らの期待を高めるものでもある。しかしこの日のメインイベントは、胸に「New York」と付けた男が、世界中の人たちの注目を操ることだった。

ホセ・バティスタやエドウィン・エンカーナシオン、そして他のブルージェイズの選手には申し訳ないが、これは田中が勝つのか、負けるのか、そのどちらでもないのかという彼の夜だった。

序盤は良くなかった田中だが、持ち直した彼は7回を投げて3失点(自責点2)、被安打6だった。彼は8つの三振を奪い四球を与えなかったが、これはスプリング・トレーニングでの登板と同じ流れだった。

「彼は確かに、本物だ」トロントのジョン・ギボンズ監督は語った。「彼はタフだった」

これは、マイナーから上がってきた若手の初登板ではなく、ヤンキースがなぜ、9桁ものギャンブルをしたのかを、世界中が目にする初めてのチャンスだったのだ。しかしながらそれは、25歳の彼の初めてのメジャーリーグでの先発でもあり、日本での経験がありながらも、初回のマウンド上の彼は、あがっていた。

「試合に入る前に、緊張していました」田中は通訳を通して語った。「マウンドに上がってからも初めは、試合に集中することができませんでした」

メルキー・カブレラに、カウント1−1からのスプリッターを打たれた時の音が、目覚まし代わりになっても良かったかもしれない。しかし田中は2回も不安定で、トロントに2点の追加点を与え、3対2のリードを許すことになった。

(忘れているかもしれないが、井川慶もヤンキースでの最初の回にホームランを打たれた)

「初めの2イニングは、少し荒れていたね」ジョー・ジラルディは言った。

しかしそれ以降の田中は、ヤンキースがなぜ、そのような大胆な契約を彼としたのかを見せつけた。

その右腕は2回、カブレラとコルビー・ラスムスから三振を奪い、ランナー2人を残塁にした。それ以降の彼は、トロントの打者の12人のうちの11人、そして18人のうちの16人をアウトにした。そしてもし内野安打が、エラーと記録されるべきでなかったとしても、最後の4.2イニングのブルージェイズは、彼を打つことができなかった。

「スプリング・トレーニングを思い起こさせることの1つだね」ジラルディは言った。「だけど、ここの開幕戦で、たくさんの観客がいて、トロントのファンの熱狂があって、このような環境の下でも彼は、早い時のミスを修正することができた。それは私から言わせれば、熟練した投手の証だよ」

「時々、早くに打たれて、最初の回を終わらせることができない選手もいるよね」ハムストリングスのケガによって故障者リスト入りすることになったマーク・テイシェイラは言った。「メジャーリーグで最初に対戦した打者にホームランを打たれて、それで彼は動揺していた? それは素晴らしい兆候だよ」

田中の代名詞であるスプリッターは、カブレラに観客席に運ばれもしたが、フロリダで対戦した半分しかメジャーリーガーがいない打線と同じように、メジャーリーガーが揃った打線にも効果的だった。

「最初に投げたスプリットが、観客席まで運ばれた。それでも彼は自信を持って、それをずっと使い続けた」ラリー・ロスチャイルド投手コーチは述べた。「今晩の彼は、良かったと思う」

もし田中に注目しているのが、日本とニューヨークだけだと考えるのなら、もう一度考えて欲しい。彼のチームが本拠地開幕戦を迎えたその日のギボンズは、試合前の記者会見において、彼のロスターについての質問と同時に田中に対するたくさんの質問を受け、そして答えていた。

「スプリング・トレーニングでの彼が、しなくてはならなかったことをについて考えて欲しい。彼はずっと注目されていた。彼は雑誌の表紙になって、どこに行ったって、みんなは彼がいつ登板するのかを知りたがっていた」ジラルディは言った。「彼はそれを、素晴らしくコントロールしていると思うよ」

シーズン前のヤンキースは、田中に対する期待を抑えることに必死だったが、スプリング・トレーニングでの好投が、期待を再沸騰させたことも事実である。そして金曜日の夜に、彼らが減らせることは、何もなかった。

田中の次の先発は、水曜日のオリオールズ戦の予定で、彼のブロンクスデビューとなるその試合は、観客がスタジアムを埋め尽くし、視聴率も凄いものとなるだろう。しかし第一印象を与えるチャンスは1度だけしかない。田中にとってそれは、金曜日の夜だった。

参考:NEW YORK DAILY NEWS