ビデオ判定のチャレンジをいつ使うのかという芸術性が、火曜日夜のチェイス・フィールドにおいて脚光を浴びた。

ジャイアンツのブルース・ボーチー監督が、本当に試合を左右する本塁での判定にチャレンジ権を使いたいと思った時、彼はすでに、他のプレーで判定を覆すことに失敗したために、それを失っていた。

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「あそこで使うべきだった」ジャイアンツが5対4でダイヤモンドバックスに負けた試合の後に、ボーチーは語った。「あの時は、何もできることはなかった。だってチャレンジ権は、すでになかったんだから。このシステムがどうなっていて、それを理解しているのかってことだ。私が、何かを変えることができたかい? ないね。チャレンジを使おうと思った時に、もう一度、そのようなことがあるのかなんて、分からないんだよ」

しかしながら、4回の一塁での牽制プレーにチャレンジを使ったボーチーにとっては、それは教訓となった。マット・ケインは、牽制球でA.J.ポロックをアウトにしようとしたが、一塁塁審のクリス・グッチオーネの判定はセーフだった。ビデオ映像も決定的なものはなく、判定は維持されたことで、ボーチーはチャレンジ権を失った。

そして同じ回の遅くにポロックが三塁にいた時に、キャッチャーのバスター・ボージーは、ケインが投じた球を後逸した。その球は、ホームベースからあまり遠くまで転がらず、急いでその球に駆け寄ったポージーは、ポロックがホームに突入すると同時に、カバーに入ったケインに正確なトスをした。

ケインのグラブに収まったそのボールは、ポロックがホームベースに達すると同時にタッチされた様に見えた。セーフかアウトか? 球審のエリック・クーパーは、セーフの判定をした。そのリプレー映像は、もう1つの判定の可能性を示していた。

「(審判はポロックが)タッチを避けたって言っていた」ケインは説明した。

再びグラウンドにかけ出てきたボーチーに、できることはなかった。彼はすでに、1回のチャレンジ権を使っていたために、鍵となる判定を覆すために、それを使うことはできなかった。もしボーチーが、最初のチャレンジで勝っていれば、彼はもう1度チャレンジすることができた。これはリプレーのチャレンジ権をどのように使うのかが今、野球の戦略の重要な一部であることの完璧な実例だった。

「そう、それが起こるんだ」と語るのは、その試合のその瞬間をちょうど見ていたメジャーリーグの副社長のジョー・ガラジオーラJrである。「彼はチャレンジを使って、そしてそれが間違えていたことで、チャレンジ権がなくなった。そして7回になるまでは、審判であっても彼ら自身でリプレーをすることはできないから」

オーナーたちが、1月の会議で拡大ビデオ判定を承認した時にトニー・ラルーサは、監督が1度のチャレンジをどのように使うのかは、代打をいつ使うのかと同じくらい戦略上で重要になるという意見を述べていた。

元監督で現在はMLBのコンサルタントを務めるラルーサは、MLB副社長で元監督のジョー・トーリと、ブレーブスのジョン・シューホルツ球団社長と共に、リプレー検討委員会の3人のうちの1人だった。

「1回のチャレンジ権でも、もし正しいと認められればもう一度与えられるところが、私は気に入っている」その時にラルーサは語っていた。「この様に考えてみよう。もし昨年のカージナルスで、ベンチに(カルロス・)ベルトランがいたとすると、その武器をいつ使うのか? 6回にそのチャンスがあるかもしれない。8回や9回に彼を使うほうが利口だろうか? リプレーは、まさにそれなんだ。リプレーの方が、より公平かもしれない」

火曜日夜のボーチーは、判定にチャレンジする可能性がある状況で、一塁に3回も出てきた。初回に彼は、ホアキン・アリアスが打ってファウルと判定されたライト線へのライナーに疑問を呈した。3回にハンター・ペンスが、ショートのクリス・オーウィングスへのゴロを打った後にも、彼はそこに出てきた。判定はアウトだったが、それはゴールドシュミットの足は、ベースを踏んでいただろうか? というものだった。

その2回の両方でボーチーは、コーチにリプレー映像を確認させながら、グッチオーネと十分に長い時間を話して時間を稼いだ。

戦術上の「常識の範囲内だ」とボーチーは言った。

その2回とも、ボーチーはチャレンジしなかった。3回目、それはポロックへの牽制だが、ボーチーは青信号を受け取った。ニューヨークにいる審判団は、3分間の映像確認を始め、最終的に判定はそのままになった。結果的にその判断が間違えていたとしても、ボーチーは、彼自身を信じていた。

「判定が正しくないと思った時には、私たちはチャレンジする。いまはそれが、判定を覆すことには直結しない。彼らの目で見て、それがはっきりしている必要があるんだ。私たちの目からみて、それはアウトに見えた。だけどそれは、賭けだった。確かに、他のプレーでも可能性はあったけど、それは誰にも分からない。それらの判断は、取り消せないから。でもあの牽制の判定は、本当に受け入れられないものだったんだ」

結果的に、牽制に対するボーチーのチャレンジが通っていれば、ホームでのプレーも起こっていなかった。しかし彼がチャレンジを使っていなければ、彼はホームでの重大なプレーに使っていただろう。

「私がいつも言っているように、そういうプレーは、自動的にビデオ判定がされるべきだ」ボーチーは言った。「だけど、システムはそうなっていない。それは見るのが、もっとも難しいプレーなんだ。私はそれを見ることができないけど、マットから聞いたところでは、彼はタッチしていた」

しかし現在のルールの中では、そのプレーは、ビデオ判定ができなかった。教訓である。

参考:MLB.com