メジャーリーグの新しいインスタント・リプレー・レビュー・システムの心臓部は、チェルシーマーケットのMLB・アドバンスド・メディアの本社にある、控えめのグレーで装飾された薄暗いオペレーションセンターである。
 
それぞれのワークステーションには、カラフルなビデオモニターが並べられ、それぞれのメジャーリーグの球場から送られてくる12ほどのカメラアングルの映像を見ることができる。

この部屋ではビデオ判定員と呼ばれる審判は、判定を支持する、あるいは覆す決定的な証拠があるのかの判断をビデオ技術者の横で行なうここでの仕事と、現場での仕事をローテーションで担当する。

水曜日に行われたデモンストレーションでは、2人のMLB関係者が、マンハッタンにいる審判とアリゾナ秋季リーグで監督からチャレンジを要求された審判の役目をした。

「スコッツデール・スコーピオンズから、一塁のランナーはセーフではないかという、チャレンジの要請がありました」メジャーリーグリーグ経済戦略担当上席副社長のクリス・マリナックが言った。

リプレー・ディレクターのジャスティン・クレムは、ワークステーションでビデオ判定員の役をしている。マリナックは、アリゾナの審判員である。クレムは、一塁側と三塁側に設置されたカメラの映像を流して分析している。彼はそれぞれのアングルの映像を、数回見なおした。「他のアングルの映像はある?」彼は左側に座っている技術者にたずねた。「ホームの高いところとかの?」

最終的に彼は、ベースから離れた一塁手がランナーにタッチをしていたのかは、確認できないという結論に至った。

そして彼は、およそ15フィートほど後ろに立っていたマリナックに伝えた。「あの判定は、有効です。私たちには、決定的な証拠はありません」

このシステムは、2008年の8月から本塁打の判定のみに導入されたビデオ判定を大きく拡大したものである。これまでの審判は、それぞれの球場に用意されたTVモニターでリプレー映像を確認して、判定を下していた。

新しいシステムは、30の球場から送られてくるカメラ映像とオペレーションセンターがつながっている。MLBは他に、それぞれの球場にホームプレート後方の高い場所にカメラを設置した。状況によって走路を変えなくてはならないランナーに対して、できる限りベストな映像をビデオ判定員に提供するためである。

監督は、ダグアウトを出て審判にチャレンジを要請しなければならない。彼は、ダグアウトから大声で要請することはできない。彼は旗やひまわりの種を投げることができない。彼はまた、プレーの判定に抗議することができるが、審判から「君はチャレンジするのか、しないのか。どうするんだ?」と聞かれたら、返事をしなくてはならない。

それぞれの監督は、1試合で1つのチャレンジ権を持つ。しかしそれが正しければ、もう1回の権利を得る。彼は審判に、どのプレーにチャレンジをするのかを明言し、そして1つ以上のプレーの確認を要求することができる。

どのプレーにチャレンジができるのか、あるいはできないのかには、長いリストがある。フォースプレー、タッチプレー、エンタイトルツーベース、死球、ファンの妨害は、チャレンジが行える代表的なプレーである。

しかしボーク、ファウルチップ、ボールとストライクの判定、ダブルプレーを狙った時のセカンドベースにおける連携プレーには、チャレンジが適用されない。

マンハッタンのオペレーションセンターではなく、それぞれの球場の外に用意された放送トラックを使用したものも含んだスプリング・トレーニングでの、このシステムのテストでは、火曜日までに61のプレーでビデオ判定がなされ、11が覆った。49のビデオ判定は監督から要請があり、他の12は責任審判によって(7回以降にできる)指示された。

MLB関係者によれば、フォースプレーとタッチプレーが、チャレンジが行われる最大の要因になるだろう。

ヤンキースの元監督で現在はMLBの代表取締役副社長のジョー・トーリによれば、このシステムは、監督が判定に抗議をする時の「直感」を保ちながら、これまではできなかった、正しくない判定を覆す方法を与えることを目的としている。

「際どいプレーがあった時に、監督は抗議をして選手を守ろうとするだろうけど、それが直接的に、彼がチャレンジすることは意味しない」

その対話は、監督に残りのチャレンジがなくなった時に続くことになる。彼らは審判が、プレーのビデオ判定をすることを要求できる。それを受け入れるかは、審判の裁量で決まる。

このシステムは、監督が怒り狂い、ベースを蹴り飛ばし、砂を投げつける機会を減らすことになる。ルー・ピネラ、アール・ウェイバー、あるいはオジー・ギーエンらは、ビデオ判定にどうやって対処するだろうか?

「彼らには、この様な方法がなかったから、怒っていたんじゃないかな」マリナックは語った。「今の監督は、起こる機会が減っちゃったね」

参考:The NewYork Times