イチロー・スズキは、すべてのインタビューを通訳を使って日本語で行なう。それは、誤解が入る余地を少しでもなくすためである。しかし彼が、英語を良く理解していることも事実である。

そしてイチローは、強調しておきたいことがあると、突然英語で話しだすことも知られている。
 
つまり日曜日のイチローは、「彼はまだ、レギュラー選手としてやっていけるのだろうか?」という話題についての嫌悪感を露わにしたのだ。彼は強いメッセージを出すために、英語を使った。控え選手に位置づけられていながらも自分自身は、レギュラー選手でやっていけると考えているのかと聞かれた彼は、アレン・ターナーが答えの通訳を始めるのを待っていた。

「僕が、それを言う必要があるとは思いませんが・・・」ターナーが話し始めると、イチローが大きめの声で割って入り、ターナーの言葉を英語で締めくくった。

「・・・僕は、まだできる。ダメだよ、そんなくだらない話は」その時のイチローが笑っていたのは、彼がその問題をあまり深刻に考えていないことを示したかったのか、あるいはそれ以外に、彼にできることがなかったからかもしれない。

そしてターナーは、通訳を続けた。「僕がどんな形でプレーするのかは、周りの人たちが決めることであって、それについて僕が何かを言うべきではない」イチローは語った。通訳を通してである。

つまりイチローは、彼のレギュラー選手としてのスキルを、他のチームに売って欲しいとは思っておらず、そして彼は、2012年にシアトル・マリナーズを離れてヤンキースに来た時の様に、トレードを要求するつもりもない。

しかし履歴書に、メジャーリーグで2,742本のヒットを放ち、MVPを獲得し、シーズン最多安打を記録したと記載されているイチローが、控え選手であることを気に入っているとは、決して考えてはいけない。

過去数年のヤンキースクラブハウスで、社交的で陽気な現在40歳のイチローは、毎日のヤンキースに注目しているたくさんの日本のメディア軍団がいながら、少なめの注目度と共に、比較的沈黙を保っている。彼らは、新加入の田中将大の取材に来ているのであって、日本人野手として2001年にアメリカンリーグ・ルーキー・オブ・ザ・イヤー、MVP、そして首位打者になるなどして強烈な輝きを放った男、イチローの取材をしに来ているのではなかった。

そしてイチローは、もはや当時の様な選手ではない。2013年の彼は150試合に出場して、OSPはキャリア最低の.639だった。ラインアップの中で最も有名な選手の1人として、そしてこれまでに本当の悪い話がなかった選手として、グラウンドに登場した時の彼は、本拠地とアウェーの両方のファンから応援される。しかし現在のヤンキースが先発ラインアップを組んだ時、そこにイチローはいない。彼は混みあう外野の中で、ジャコビー・エルズベリー、ブレッド・ガードナー、カルロス・ベルトラン、そしてアルフォンソ・ソリアーノの後ろの5番目にいる。

普段は屈託がなく思慮深いスズキが、今シーズンの限られた役目についての気持ちを話した時は、ぶっきらぼうで、よそよそしかった。

「今のところは、何も違いは感じません。(シーズン中に)僕がどう感じるのかは分かりませんけど。その時にどう思うのかは、想像できません。今のところは、去年までと何も変わりはないと思っています」

ヤンキースは、イチローに対するオファーは歓迎するという姿勢を明らかにしている。CBSのジョン・ヘイマンは日曜日、もし優秀な選手とのトレードであれば、ヤンキースは、彼の6.5百万ドルの年俸の一部を負担すると報じた。しかしながら彼らは、高額でありながら、守備固めと代走としての価値を持つ彼を、控え選手としてキープしておくことにも満足している。

しかし国際的なアイコンであるイチローが、交代要員で良いのだろうか? ジョー・ジラルディ監督は、イチローにその状況を説明しなければならないと分かっている。それは誰もケガをしないという前提での、彼の現状と新しい役目についてである。

「物事は、次の週には変わっているかもしれない」ジラルディは語った。「だけど私は、彼らが与えられた役目で私が使えるように、全員の選手が準備をできるようにしなければならないんだ。そして選手たちは、それに準備しなければならない」

ヤンキースは、契約が終わる時にはイチローが41歳であることを知っていて、2013年シーズン前に彼と2年契約を結んだ。彼らは昨シーズンのイチローが、米国と日本で通算4,000本安打を達成する時のマーケットの売上で、すでにわずかな恩恵を受けている。しかしメジャーリーグでの3,000本安打達成までには残り258本であり、ヤンキースはイチローがピンストライプを着ている間に、その記録を達成するところを見られるとは考えにくい。

イチローは、近い将来の引退はないと明言していている。そして彼はまだ、長く野球をプレーできると信じている。もし彼が記録を追い求めるのなら、他のユニフォームを来たレギュラー選手として、それをしなければならないだろう。彼はトレードについての考えを話さなかった。それは、彼のための話題ではなく、記者たちのための話題だからである。

しかしイチローは、控え選手というその立場を、日本で新人だった時以来、経験したことがない。つまり現在の彼が、それを楽しめる理由はなにもないのだ。

沈黙を守る彼は、それを変えたいと言うこともほとんどない。ロッカールームの角にある自分の椅子に膝を乗せたアイコンは、誰にもそれを話さない。

参考:THE WALL STREET JOUENAL