カクタスリーグの試合が始まる数分前にクリーブランド・インディアンスのダグアウトの前に立っていたブラッド・ミルズは、笑顔と共にテリー・フランコナを指さした。

「なぜ彼について、悪いことを書かないんだ?」インディアンスのベンチコーチを務めるミルズは、そのクリーブランドの監督について言った。「彼のことを、誰も悪く書かないんだ。君たちは、彼が完璧な人間だと思っているんだろ」

ミルズは、フランコナにそれを言うことができる。彼らは1970年代の後半に、アリゾナ大学で一緒にプレーした仲である。そしてミルズは、フィラデルフィア・フィリーズとボストン・レッドソックスで、フランコナのベンチコーチを務めてきた。 最近は誰であっても、フランコナについてネガティブな記事を書くことができないことを、ミルズは良く知っている。レッドソックスにおけるフランコナの最後のシーズン中にボストンが墜落したのは、今から2年前のことである。そして彼は、クリーブランドで信頼を取り戻している。

インディアンスがレギュラーシーズンの最後に10連勝を果たし、2007年以来初めてのポストシーズン進出となるワイルドカードを奪取したことで、昨シーズンのフランコナは、アメリカンリーグ・マネージャー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。ESPNの解説者として1年間ダグアウトから離れたフランコナは、能力を失っていないことを証明した。

「彼は、何かを自分の手柄にするような人間でないけど、彼がここの文化を変えて、新鮮な空気を運んできたことに関して、本当に素晴らしい仕事をした」フランコナについて、ミルズは語った。「彼は本当に人の気持ちがわかる人間で、選手たちと上手くやっている。そのことで、全員が上手くできるような良い環境を造っているんだ」

昨シーズンのインディアンスの成功は、期待を遥かに超えたものだった。2012年のインディアンスは、5年連続の負け越しとなる68勝94敗でシーズンを終えていた。

それでも右腕のジャスティン・マスターソンは、2012年の10月にインディアンスがフランコナを雇った時、何かが変わることを確信していた。マスターソンがメジャーリーグでブレイクしたのは、レッドソックスにいた2008年で、フランコナはその1年後に、ボストンをワールドシリーズ制覇へ導いた。それはレッドソックスが、86年ぶりにチャンピオンになってから4年後のことだった。

「彼が何をもたらしたのかというと、それは信頼関係。そしてそれは、このレベルではとても大切なことで、大きな違いを生み出すんだ。メジャーリーグで、人をバカみたいに扱うことはできないから。彼がこの仕事に着いた時に、僕は彼に電話をして、そして"僕たちは、変わらなくてはならない"って伝えたんだ。彼は心配するな。素晴らしいコーチ陣を連れてくるし、オーナーは、勝利を約束しているからって。電話を置いた時に僕は、本当に嬉しかった。 これまでの成績に関係なく、僕たちは優勝争いができるって思ったことは、正しかった」

フランコナがマスターソンに約束したことは、すべてその通りになった。インディアンスは、本当に久しぶりにフリーエージェントとの契約に資金を使った。一塁手のニック・スイッシャー、そして外野手のマイケル・ボーンとの契約で、合計104百万ドルを費やしたのだ。一方で、前からいる選手の多くは、ミッキー・キャラウェイ投手コーチとタイ・バン・バークレオ打撃コーチの下で、次のステップへ進む準備が整っていた。

そしてインディアンスは、チームが、メジャーリーグのスケジュールで毎日プレーを続けること以上のどんなプレッシャーも感じることなく、プロフェッショナルな環境を作ってくれると、フランコナを信頼していた。

「1試合目から162試合目まで、彼は同じルーチンで、前に出ることはない」フランコナについてボーンは語った。「彼は嫌になるほどのミーティングをしたり、選手を試したりするような監督ではないんだ。必要なことしか喋らない。だから彼が話すことには、みんなが耳を傾ける。彼はずっと、それをしている。彼は状況に関係なく、前に出ることはしない。選手としては、それはとてもやりやすいんだ」

人を扱うことの上手さは、確かにフランコナの強みである。彼は野球の戦略や、チームの選手を利用することだけでなく、長く厳しい162試合の間に、選手を喜ばせ続けることを知っているのだ。それを知らない監督は、長続きしない。

「テリー・フランコナと一緒にプレーをしたくないというメジャーリーグの選手を、私は知らない」マスターソンは語った。「クリーブランドは、プレーをするのに良い場所だと、他のチームの多くの選手が、必ずしも考えていないと思う。でも彼が監督であれば、それは一変するんだ」

現在のインディアンスの課題は、昨年の92勝70敗の成功を続けることである。打線に大きな変更がなかった中で、左腕のスコット・カズミアと右腕のウバルド・ヒメネスを失ったクリーブランドは、先発投手陣を建て治す必要がある。その2人は昨シーズン、合わせて23勝18敗、防御率3.65を記録していた。

デトロイト・タイガースは、ア・リーグ中地区で3年連続の優勝を果たしたチームだが、昨シーズンのインディアンスとは、わずかに1ゲーム差しかなかった。しかしながらタイガースは、中心選手だった一塁手のプリンス・フィルダーと右腕のダグ・フィスターを、シーズンオフにトレードしたことで、少なくとも多少、弱体化したように見える。

「私たちは、'27年のヤンキースになろうとは思っていない」フランコナは語った。「全部のポジションにオールスターがいるわけではない。私たちがしていることは、必死にプレーすることで良い雰囲気を作ってくれるベテランと、もっと成長したいと望む若手の良いグループを作ることだ。昨シーズンのチームから学んだ1つのことは、腹にパンチを一発喰らっても、やり返すことができるということ。私はその点で、うちの選手を気に入っている。私がこのチームをとても気に入っているのは、それが理由だ」

その気持ちは、お互い様である。

「彼は、一緒にプレーするには最高なんだ。楽しくしてくれるからね。だけど僕たちは、彼がこのチームのリーダーであることを尊重している」外野手のマイケル・ブラントリーは語った。「昨シーズンの僕たちが成功したのは、彼によるところが大きいんだ。彼は僕たちに、勝ち方を教えてくれた。今年、それ以上の結果を残すのは、僕たち次第だ」

参考記事:WINNING WAYS By John Perrotto SPORTS ON EARTH