新たな野球シーズンの始まりが、目前に迫っている。そしてほとんどの選手にとっては、それは嬉しい事である。なにせ、野球が始まるのだから。

しかし、どのチームとも契約をしていない選手たちがいる。代表的なのが、ケンドリー・モラレスとスティーブン・ドルーだ。モラレスは、マリナーズの指名打者兼一塁手として、打率.277、OPS.785を記録した素晴らしいシーズンの翌年だ。流れるような守備のショート選手であるドルーは、レッドソックスのワールドシリーズ制覇に貢献した。

注目のフリーエージェントである彼らが、この時期まで所属先が決まらない理由を、ここで考えてみよう。悪名高きスコット・ボラスが、法外な金額を要求している。または、1年14.1百万ドルのクオリファイ・オファーを断ったことで、(上位10番目指名以外のチームは)ドラフトの1巡目指名権を手放さなければならなくなる。これらのいずれか、もしかしたらその両方が理由である。

しかしモラレスとドルーだけが、残っているフリーエージェントではない。昨年のメジャーリーグでプレーした選手の20人以上が、引退を発表せず、あるいは日本や韓国へ行くことなく、まだ未契約だ。

プラシド・ポランコは、昨シーズンのマーリンズのレギュラー三塁手だった。ファン・ピエールは、マイアミのレフト選手だった。

ジョエル・ハンラハンは、2011年と'12年のパイレーツで、合計76セーブを挙げた。オースチン・カーンズは、'10年のインディアンスとヤンキースで49打点を記録し、同じ年にアンドレス・トーレスは、ワールドシリーズ・チャンピオンになったジャイアンツで、ポストシーズンのスターになった。

フランク・フランシスコ、ケリー・ショパッチ、ミゲル・テハダ、バリー・ジトーなどの馴染みの名前が揃っているが、彼らはドラフト指名権を失う必要はなく、おそらく予算に大きな影響を与える契約にもならないだろう。

彼らのほとんどは、30代中盤である。ケガ明けの選手が何人かおり、近年良いプレーができなかった選手もいる。30歳のモラレスと31歳のドルーは、いつかの時点で、どこかのチームと契約する運命にあるだろうが、噂の中でさえ名前が上がってこない残りのフリーエージェントたちの未来は、かなり不透明である。

「もうほとんど、スプリング・トレーニングは終わっているから。私たちは、彼らと契約するのではなく、契約を解除しているところだ」アメリカン・リーグのスカウトを長年勤めているある人物は、この様に語った。「いま契約していない選手は、ケガとか、それ以上のことがあるまでは、誰も興味を示さないだろうね。それにマイナーリーグを見てみても、現時点では、誰もメジャーリーグのキャンプに上がってくることはないだろう」

「もし彼らのうちの誰かが、まだプレーをしたいと思うのなら、独立リーグと連絡を取ることになるだろうね」

その一方で、モラレスとドルーの行方の予想は、人気の話題のままである。

「1つには、投手を待つというのがある」あるベテランのナショナル・リーグのスカウトは指摘した。「 優勝争いを狙っているチームに常にあるのが、早くに投手がケガをしたら、マーケットに残っている投手なら誰であっても、獲得しなくてはならないということなんだ。野手にとっては、より厳しい状況になる」

「いまは、それらの選手にとっては、少し遅すぎる。彼らはおそらく、彼らの価値を再構築するために、1年契約で我慢せざるを得ないだろう」

彼は、スプリング・トレーニングが始まってから、A.J.バーネット(フィリーズ)、アーヴィン・サンタナ(ブレーブス)、そしてウバルド・ヒメネス(オリオールズ)らの投手が契約したことを指摘した。

そして同時に、少なくとも数チームが、ショート選手を探していると報道されている。タイガースは、シーズン全休の可能性もあるホセ・イグレシアスのケガによる影響を懸念してる。メッツが、ルーベン・テハダのアップグレードを狙っているのは、カーチス・グランダーソンと契約して2巡目指名権を失ったことで1巡目指名はプロテクトされており、ドルーと契約しても、失うのは3巡目指名権だからである。しかし彼らは、1年、そして10百万ドルを超える契約は、歓迎していない。そして彼らは、トレードでシアトルからニック・フランクリンを獲得することを狙っている。

パイレーツは、モラレスの価格が下がれば、ドラフト1巡目指名権を失うことは受け入れると噂されている。

そしてまた、彼れらが昨年プレーしたチームに戻る可能性も消えていない。コリー・ハートをDHとして現在考えているマリナーズはまだ、モラレスが要求額を下げるケースを想定して、注目を続けていると報道されている。

そして同様に、前年のワールドシリーズチャンピオンであるレッドソックスは、エグザンター・ボガーツを気に入っているが、彼らはその重要なポジションに、経験が必要であると最終的に決断する可能性がある。

ボラスはESPNに、モラレスとドルーは、契約してもドラフト指名権が必要なくなる6月まで待つことを厭わないと語った。それは確かに選択肢の1つではあるが、ナ・リーグのスカウトは、それには疑いを持っている。

「彼らにとってベストなことは、グラウンド上に戻ることだね。長い目で見ると、座っているというのは、本当に彼らのためにならない。プレーをして、しっかりとした成績を残して、来年再挑戦する。モラレスは指名打者だから、選択肢は多くない。そしてチームたちが心配しているのは、ドルーが再びケガをすること。だけど彼ら2人は、チームの戦力になる。上手くいけば、すぐにでも何かが起こるんじゃないかな」

参考記事:Unsigned free agents still playing waiting game By Paul Hagen / MLB.com