ウェイティング・サークルにライアン・ブラウンが足を踏み入れると、たくさんのヤジが飛ぶ。彼が打席に入っている間もその叫びは続き、彼がフライボールをキャッチすると、ブーイングが沸き起こる。

しかしブラウンは、決してたじろがない

彼には、その声が聞こえている。山になったブーイングは、個人の憎悪をかき消してしまうが、彼には、その憎しみの声が聞こえている。報復の声である。

しかし彼は、その人たちの目を見つめ、そんなことでは揺るがないと断言する。

日曜日のアリゾナ州メサにあるカブス・パークで、カクタスリーグ記録になる14,770人観衆の前でプレーしたブラウンは、それは、この春にブルワーズのホームゲームに来る対戦チームのファンがすること同じだとして、それに屈服することを拒絶した。

「僕について、言いたいことを言えば良いんだ。だけど僕は強いからね」USA TODAYの独占インタビューでブラウンは言った。「精神的に、そして感情的にも、僕は強いんだ」

「そんなことで僕は悩まない。その人たちはいま、叫ぶための新しい理由があるのかもしれないけどね。だけどそれで、僕がこれまでと何かが変わるとかは、まったくない。これまでもシカゴで応援されたことはないし、セントルイスで、"頑張れ"なんて言われたことはなかった。対戦相手のベストプレーヤーを応援するファンなんていないよ」

「今年は、これまでになかったようなことが少しはあると思うけど、もしそうでも、たぶん今のほうが良いだろうね。フィラデルフィアやシカゴに行くと、いつもはママとか妹とか、ガールフレンドなんかのことを言われるんだ。だけど今は、僕のことだけだから」

そして違うことは、当然ながら、そのファンがブラウンの実力をやじり倒すのではないことだ。

それは彼の過去、パフォーマンス増強薬についてである。ブラウンは昨年の7月、他の14人の選手に先駆けて、残りの65試合の出場停止を受け入れた。それは、バイオジェネシスに関係していたからである。彼の損失は3.3百万ドルだった。

しかしもっともダメージを受けたのは、彼の威厳である。

30歳のブラウンは、許しを求めていない。彼は、理解してほしいとさえ思っていない。

彼の望みは、誰も彼を信じなくても、どのようにしてその間違いが起こったのか、なぜその間違いを犯したのか、そしてどうしてトニー・ボッシュやバイオジェネシスを知らないと言ったのかを、公の場で話すことだった。

そして、いまの彼ができることは、これから先で判断してもらうことである。

「これを取り上げて、その話題を引き伸ばす理由がないんだ」彼は言う。「それは、球界にとってよくないことで、チームにとってよくないことで、僕にとってよくないこと。誰にとっても、よくないことだから」

「確かに、テレビの視聴率は良くなるだろうけど、それに関係ない人は、そうすることを望んでいない」

それは月曜日にバリー・ボンズが、ゲスト・スプリング・トレーニング・インストラクターとしてサンフランシスコ・ジャイアンツに戻ってくる時も変わらないだろう。インストラクターとして彼は、元チームメイトのリッチ・オリーリアとJ.T.スノーに加わる。そしてボンズは、たくさんのカメラマンとテープレコーダー、そしてマイクの前で記者会見を行なう唯一の人物になる。

しかし会見の話題は、ボンズが彼の打撃を秘密を喜んで公にするということには、ならないだろう。

「こういう類のことは、僕たちの一般社会の中に、もっと根深い問題があることを示しているんだ」ブラウンは言う。「人々は、ネガティブなことが好きだよね。素晴らしい話がたくさんあって、目を向けるべき素晴らしいことも本当にたくさんあるのに、人々は、ネガティブなことに注目する。それは多くの人たちの人生が、幸せでないからなんだよ」

日曜日にブラウンが二塁打を放った時、1人のファンが「ステロイドがないと、打てないんだろ」と叫んだ。ファンは、今年の春のブラウンに対して「M-V-P-E-D」と応援した。この無礼な行為は、ニュースになった。そしてこの春の彼を熱心に応援しているブルワーズファンの軍団には、だれも言及さえしない。彼らはマリーベル球場に彼のユニフォームを着て現れ、そしてもちろん、彼を許している。

ブラウンによれば、冬の間に、怒りをぶつけるために誰かが接触してきたことは一度もなかった。彼はブルワーズのファンフェスタで、これまでのキャリアで一番の声援を受けた。対戦投手の誰も、彼にぶつけない。敵チームの誰も、公に彼をひやかしたりしない。彼のチームメイトは、ハムストリングのケガから戻ってきた時と同じ様に、彼に接している。

いつかの時点で、その状況が、ドラックスキャンダルに対する免疫になるかもしれない。今シーズンのブラウンには、薬物で出場停止になった、たくさんの仲間の選手がいるからだ。もしカージナルスファンなら、表舞台に戻ってきたブラウンにブーイングをしながら、ジョニー・ペラルタには大きな声援を送るのだろうか? オリオールズの外野手ネルソン・クルーズを愛しながら、ブラウンを憎むのは、偽善ではないのだろうか?

ブラウンは、世間知らずではない。彼は周りに、まだ怒っている人がたくさんいることを実感している。それは、彼が2012年に薬物検査の結果をひっくり返したとき、ブラウンにやられたと感じている人たちだ。当時の彼は、尿サンプルの取り扱い者による手の込んだ陰謀だというおかしな理屈ではなく、そのシステムを技術的に打ち負かした。

彼は、その数か月後に起こった105百万ドルの新しい延長契約を得ることを、本当に望んでいて、ふくらはぎと四頭筋のケガをした時の彼は、グラウンド上に立ち続けるための方法として、薬物を摂取した。その時の彼は、それは完全に合法だと信じていた。おそらくブラウンはこの様に、自分自身に嘘をついていたのだろう。

しかしそんな推測を聞くことは、誰も望んでいない。

そしてブラウンは、非難を聴き続けながらも、それを受け入れるだろう。

過去にPEDを使用したことに対して処分を受けていないが、広く愛されている選手がたくさんいることは、彼にとっては良い話かもしれない。レッドソックの指名打者デビッド・オルティスは、2003年の匿名の薬物検査で陽性になったが、ボストンでは崇拝されている。アンディ・ペティットはPED使用を認めていながら、引退したその日まで、多くのファンに愛されていた。2003年にステロイドとヒト成長ホルモンを使用したことを連邦大陪審で認めたクリーブランド・インディアンスの指名打者ジェイソン・ジアンビ以外にも、複数の選手が、尊敬と賞賛を受けている。

それではなぜ、ブラウンは許されないのだろうか?

「僕が間違いを犯したことは、間違いない」彼は言う。「誰でも間違うことはあるんだ。でもその間違いを公に認めなくてはならない人は、そう多くない」

チームメイトからブルワーズのシーズンチケット購入者、そしてバド・セリグ・コミッショナー、そして自身の家族らの全員に謝罪したブラウンは、以前のように愛される選手に戻れると信じている。

確かに、それには時間が必要だ。しかしブラウンは、ブーイングを気にしなくなった。そして彼は以前、PEDを使うことなくプレーができるのかという疑問を持つ人たちに答えを出している。

2011年に薬物検査に引っかかったブラウンは、2012年には、キャリア最高のシーズンを送った。打率.319、41本塁打、そして112打点、さらにMVP投票では2位になった。いまの彼は、より精密な検査も歓迎している。

「僕は、リーグでもトップの選手の1人だと自負している」ブラウンは言う。今春の彼は、打率.636で2本塁打だ。「もしこれまでと同じようなプレーができれば、メジャーリーグでもベストプレーヤーの1人になることができる。それを成し遂げるために、他の理由は必要ない」

「僕は、プレーで証明しようと思っている。すべての優秀な人たちがやっているようにね」

12月に結婚して新婚旅行でボラボラに行ったブラウンは、いくつかの点で問題はあるが、人生は上手く行っていると強調する。 

「これまでと同じ様に、人生を楽しんでいるよ」彼は言った。「今年、ムカつく瞬間が全くないとは言わない。だけどさ、 一つ目のドラマが終わっていないのに、続編があると思う?」

「僕は、良い立場にいるんだ」

たとえ大勢の人が望んでいなくても、それが事実である。 

参考記事:Nightengale: Ryan Braun leads the majors in confidence Bob Nightengale, USA TODAY Sports