ヤンキースで、日本に関わるすべての事の連絡係を務めるジョージ・ローズは、今週のヤンキース・キャンプで、4人全員の日本人選手に、英語の勉強セットが入った黄色い箱を配った。その考えは、野球の球を投げたり打ったりするのと同じくらい難しい英語の勉強に対する選手たちの努力を手伝うというものである。

しかし違う目的も持っていたローズはまた、ヤンキースのキャッチャー、ブライアン・マッキャンとフランシスコ・セルベリの2人にも、それとは違う2つの箱を渡した。彼ら2人は、少しの日本語を学ぶための教材をリクエストしていたのだ。

 ヤンキースのキャンプは、語学教室に変わった。

「僕は話すのが好きだし、僕が何を言っているのかを、チームメイトに知ってほしい」ベネズエラ生まれで、母国語がスペイン語のセルベリは言った。「話そうと思ってマウンドに行っても、通訳はいないからね。だから僕の言いたいことを彼らに伝える方法を、学ぶ必要があるんだ」

良いコミュニケーションは、チームスポーツの生命線である。そして球界においては、英語とスペイン語、そして日本語の3つの言葉が圧倒的(他に耳にすることがあるのは、韓国語、フランス語、北京語、イタリア語、オランダ語など)だ。

日本人選手の多くは、専属の通訳をつけている。それは通常、彼らに付き添うバイリンガルのコーチやチームメイトが、チームにいないからである。しかし少しの英語を学ぶことは日本人選手にとっての義務であり、新たにチームに加わった右腕の田中将大も、名詞や動詞を始めとした英語のボキャブラリーを増やしているところである。

田中は最近、英語で彼の6つの球種の名前を挙げた。そして数日前、練習後の彼は、記者たちの前を通り過ぎるときに、“Finished”と言った。練習後の選手から出てくる言葉は、いつでも大歓迎である。

一般的にチームに日本人選手がいる時、英語とスペイン語を話せる選手たちは、いくつかの日本語の単語もまた、覚えるものである。松井秀喜、そして伊良部秀輝と一緒に長年プレーしてきたデレク・ジーターは、“ハウ・アー・ユー?” と“サンキュー” を日本語で言うことができる。ドミニカ生まれで、日本プロ野球でもプレー経験があるアルフォンソ・ソリアーノは、いまでも多少の日本語を話すことができる。

しかし日本語を学びたいと選手が自ら言うことは、それらとはまったく別のことである。マッキャンが明かしたプランは、遠征中のホテルでその勉強をするというものだ。

「うちの投手と話す時に、いくつかの単語を知っておくことが大切だと思ったんだ」彼は言った。

キャッチャーが、少なくともその努力をしていることを知った田中は、喜んでいた。

「それは嬉しいですね。僕のことを考えてくれているってことですから」彼は通訳を通して言った。「僕とキャッチャーのコミュニケーションは、とても重要ですからね」

共通の言語を持たないピッチャーとキャッチャーの間のマウンド上での会話はぎこちなくなるが、たいてい意思疎通ができるのは、多くの野球用語が共通だからである。カーブボールは、日本語では「カーブ」そしてスペイン語では「curva(クルバ)である。ブルペンは、3つの言語のすべてで「ブルペン」だ。

基本的に流暢な英語を話すイチローは、日本の高校生の時以来、英語を学んだことがないと言った。しかし彼は、2001年に新人選手として米国に来てから、英語を話しながら段階的に学んできた。したがって彼に勉強セットは、必要ないだろう。

2003年にニューヨークに来た元ヤンキースの松井は、今では、それがよほど難しい話でない限り、英語で日常会話をすることができる。彼の英語は、おそらくメジャーリーグレベルではないが、3A程度はある。

「最初に来た時は、大変でした」ヤンキースキャンプに来ている彼は、英語で言った。「野球に集中していたので、勉強する時間がありませんでした」

ヤンキースを離れて4年が経つ今もニューヨークに住む松井は、英語の先生を雇い、1回2〜3時間のレッスンを週に数回受けている。

セルベリは、もっと楽しい方法で英語を学んだ。彼がガルフコースト・ヤンキースでプレーするために米国に来たのは2005年、彼はアメリカ人女性と出会い、あとにデートをするようになった。

「2年間一緒にいたんだけど、僕はそれで英語を学んだんだ」彼は言った。「僕は英語をまったく話せなくて、彼女はスペイン語がまったくダメ。だけど僕たちは、がんばったよ。そうしなくてはならなかったし。僕はみんなを、いつも困らせていたんだって思う。それってどんな意味? あれはなんの意味? っていつも言っていると、相手はたぶん、気を悪くするよね。だから僕は、勉強しようと思った」

セルベリはすでに、いくつかの日本語を習得した。彼はスプリング・トレーニングで田中の球を初めて受けたあとに、たくさんの日本人記者からインタビューをされた。それはもし彼がメジャーリーグのチームに残れば、日本で何か使えるかもしれないと彼らが考えたからだった。そして多少の日本語を知っておくことは有利になるかもしれないと、彼はすぐに理解した。

そしてこの記事のためのインタビューを英語で受けていた彼は、終わった時に微笑んだ。そして「アリガトウ」と言った。それは日本語のサンキューである。

来週は、単語クイズが行われるかもしれない。

参考記事:Yankees Want No Room for Misinterpretation By DAVID WALDSTEIN The New York Times