数年前の春、天才日本人投手がいた。彼は6〜7つの球種を操り、彼についた100百万ドルの値札と共に、フロリダ中の注目の的だった。それはまるで、いまの田中将大のようだった。

それは2007年3月のことだった。松坂大輔が初めてメジャーリーグの打者と対戦するフロリダ・マーリンズ対レッドソックスのオープン戦のチケットを得るために、50人を超えるファンが、朝の4時からロジャー・ディーン球場の前に詰めかけていた。レッドソックスはその数週間前に、日本で最高の投手だった松坂に51.1百万ドルを投じて独占交渉権を獲得し、その後52百万ドルの契約を結んでいた。「来ちゃったよ」その日、ある1人のファンが言った。「ジャイロボールを見るために」

日本のメディアが騒ぎ立てたような「ジャイロボール」を、これまでに見た人がいるのかは定かではない。しかし、2011年のトミー・ジョン手術につながる度重なるケガによって、彼が歴史の1ページになってしまうまでの2シーズンに限っては、レッドソックスが期待したそのものだった。そしてそれは7年後の今、彼がメッツの一員としてロジャー・ディーン球場に戻ってきた日曜日、テリー・コリンズの先発ローテーションの5番目の枠を勝ち取る過程を取材する一握りのメディアと共に、わずかに残っていた。日本メディアの大群は、当然ながら州の反対側のタンパにおり、ヤンキースが日出る国から155百万ドルで輸入した田中の投球のすべてに注目している。

しかし松坂の実力が落ち続けているように見えているかもしれない間も、コリンズだけは、彼に大きな夢を見ている。そのメッツの監督は、昨年終盤のメッツでの松坂が、3回の素晴らしい先発をしたこと、特にシンシナティ・レッズを相手に7.2回を無失点に抑えた最後の試合を、忘れることができない。

「シンシナティは、まだプレーオフを狙って戦っていたからね」コリンズは日曜日に語った。「なのにダイスケは、彼らを圧倒した。私が見た彼の投球の中で、一番くらいに良かった」

それが、コリンズが個人的に、33歳の松坂がメッツで復活するかもしれないと考えている理由である。昨シーズンのメッツで不安定な先発をしたあとの松坂は、ダン・ワーゼン投手コーチと、投球フォームにいくつかの修正を加えた。「プレートを蹴って前に出た時に、彼の踵が滑っていたんだ」ワーゼンは説明した。

「私たちは、彼がプレートに真っ直ぐ立つようにした。球速は多少遅くなっているけど、今はよりコントロールが良くなっている」

レッドソックスで圧倒的だった時でさえ松坂は、与四球率が高かった。2008年に18勝3敗を記録した時の彼は、アメリカン・リーグトップの94四球を与えていた。しかし昨年のメッツで38.2イニング投げた彼は、33奪三振の間に16四球しか与えなかった。そしてもっと大きなことは、投球数が減ったことで、コリンズは彼が、ローテーションの後ろでイニングを稼ぐ投手になる可能性があると見ている。

「それなんだ」その監督は、喜んでいる理由を語った。「そうなると、うちには本当に大きい」

メッツはこれまでのところ、5番手の枠は、松坂とジェンリー・メヒア、豪腕の新人ジェイコブ・デグロム 、そしてロスター枠外のジョン・ラナンの争いが続いていると言っている。ラナンは土曜日のマーリンズ戦で、なんとか87マイルを記録した。そして日曜日にオープン戦デビューを飾った松坂は、カージナルス戦の初回に、マット・カーペンターとマット・ホリデーに強烈な二塁打を打たれて1点を失ったが、その後は2回までアウトを積み重ねた。彼は26球を投げ、18球がストライクだった。

「スライダーは、もう少し修正の必要があるけど、それ以外は全部良かったと思います」松坂は登板の結果について、通訳を通して言った。「(今と最近の数年間の)大きな違いは、すべての球種で、ストライクを投げていることです」

確かに、日曜日と前回ロジャー・ディーン球場で投げた7年前の状況には、大きな違いがある。彼の目標は、彼によれば、この春に5番目の位置を勝ち取ることだけでなく、1年を通してメッツに貢献することである。スプリング・トレーニングでもっとも注目されたときと、現在のメッツキャンプでかろうじて注目されることの差を、彼は気にしていないようである。

「2007年にここに来た時のことは、覚えています」彼は言った。「メジャーリーグの打者と初めて対戦して、とても興奮しました。だけどファンの応援だとか声援みたいなものは、ロードの試合だったので、なかったと思います」

「ところでジャイロボールって?」 私は彼にたずねた。「その日に集まった多くのファンが、それを見たいって言っていたけど」 

「そんな球は、ありませんよ」松坂は、笑いながら言った。「日本のメディアが、つくったんです。作り話です」

コリンズに、それは関係ない。彼は松坂が新たに身につけた投球術に、それが作り話でないだけに、期待している。昨シーズンの最後の3試合の彼もまた、幻ではない。そして松坂のカムバック・ストーリは、街の反対側のより華やかな田中の物語よりも、メッツにとっては大きなものになるだろう。

参考記事:Seven years after Daisuke Matsuzaka made debut, he's out to try and make Mets roster NEW YORK DAILY NEWS