昨年の11月20日、レンジャーズのジョン・ダニエルズGMは、ブレインストーミングを一緒に行なうために、フロントオフィスのメンバーを集めた。その会議の中心のテーマは、チームのロスターの中で混みあっているセカンドとショートをどうするのかだった。
 
レンジャーズはセカンドに、31歳で3回オールスターに出場しているイアン・キンズラーがいた。彼らには、25歳で2回のオールスター経験があるショートのエルビス・アンドロスがいた。そして昨シーズンのベースボール・アメリカの球界のトップ・プロスペクトに名前が上がった21歳のジュリクソン・プロファーが、レギュラーでいずれかのポジションにつく準備ができていた。つまり彼らには、2つの場所に、3人のとても素晴らしい選手がいたのだ。そして彼らに続いて急激に成長しているマイナー・リーグの選手、高く評価されているベネズエラ人の内野プロスペクト、ルイス・サーディナスとルーンド・オドアがいる。

レンジャーズの幹部たちは、それら3人のメジャーリーガーのそれぞれについて、トレードの可能性を検討した。GM補佐のA.J.プレラーは、もしかしたらタイガースが、キンズラーとの交換なら、プリンス・フィルダーを動かすかもしれないと提案した。元ブルワーズのその29歳は、デトロイトでの2シーズン目で、彼の標準からすれば不調(打率.279、25本塁打、106打点)に陥っていた。それは全員が同意する、興味深いアイデアだった。

そして翌日の11月21日火曜日、ダニエルズの電話が鳴った。タイガースのデーブ・ドンブロウツキGMと繋がっていた。ダニエルズは、イアン・キンズラーとプリンス・フィルダーが関係するトレードに興味があるのか? と聞かれた。「イエス」、ダニエルズは答えた。彼はそれを望んでいた。

それから数時間、2人のGMは、トレードの形について話し合いをした。他の選手を含めるのか? その必要はない。彼らはすぐに結論に達した。球史上5番目に大きな9年214百万ドルの、わずか22か月前フィルダーと結んだ契約を相殺するために、タイガースからレンジャーズにいくらを送るのか? それは30百万ドル、2016年から2020年までの分割払いで合意した。そして水曜日の午後、彼らは取引を成立させた。ブロックバスター・トレードが、これほど簡単に決まるのは稀なことだが、稀なことの1つは、両者の思惑が一致していたことだった。

レンジャーズにとってのそのトレードは、ラインアップの基本的な形を変えずに向上させ、そして新たな発見をするために、彼らの持ち物を有効活用するという問題だった。メジャーリーグ3位になる855得点を記録した2011年の彼らは、2年連続でワールドシリーズ進出を果たした。しかし昨シーズンの彼らの打撃力は、現実よりも評判が上回っていた。「みんなが、うちの攻撃力は強力だって考えていて、私たちも大丈夫だと思っていたけど、足りなかった」ダニエルズは言った。

ジョシュ・ハミルトンがいなくなった2013年のレンジャーズ・ラインアップは、ハミルトンが彼らに与えていた左打者のパワーが特に失われ、得点では8位に落ちていた。彼らの左打者が叩きだした69本塁打は、アメリカン・リーグで10位だった。左打者のフィルダーは、2007年以降で255本塁打を記録しており、それは他の左打者よりも13本も多い。そして彼の泥沼の離婚劇と、彼の前にテキサスの近いライト側フェンスが来ることを考えると、レンジャーズは彼のパワーが復活すると合理的に考えることができた。テキサスはヤンキースが、その翌月にジャコビー・エルズベリーと結んだのより150百万ドル安く、そして短い期間で、頑丈なスラッガーを加えた。

タイガース側からみたその取引は、彼らのスタイルとアイデンティティを再構築するものと見られ、そしてそれは、新しい監督のブラッド・オースマスが最初のスプリング・トレーニングに入るときに、明らかになった。フィルダーがいた時のタイガースは、いろいろな意味で、世界でもっとも素晴らしいスローピッチソフトボールのチームだったが、今はダイヤモンドの中に、戦略に合わない選手がいる場所はなかった。彼らは、ゆっくり歩くこと以上のベース間の移動ができず、大きな一発を待つだけだった。昨年の彼らの35盗塁は、1994年以降のチームで2番めの少なさだった。7月23日から8月27日までの34試合の彼らは、盗塁を1回しただけだった。

フィルダーを始めとして、ミゲル・カブレラ、トリィ・ハンター、そしてビクター・マルチネスら打者は、ほとんどにおいて、この仕事をとても良くやってきた。デトロイトの796得点は、レッドソックスに次いで2位、そしてそれはしばしば、一気にやってきた。タイガースは、5点差以上で決まった試合では33勝15敗だった。それが上手くいかない時の彼らは、試合をひっくり返すことができなかた。1点差の試合の彼らは20勝26敗、その結果には運が多く関係するが、彼らがどうしても1点ほしい時に、得点を生み出すことができなかったことも少なくとも事実である。アメリカン・リーグ優勝決定シリーズにおいてレッドソックスに負けた4試合のうちの3試合は、1点差だった。

今年の打撃陣についてオースマスは、フィルダーがいなくなったことでパワーは少し落ちたかもしれないが、特に走塁については、よりダイナミックになると語った。キンズラーは、過去2シーズンで36盗塁を記録しており、リードオフになる可能性が高い彼のその成功率は、勇気を与えるものである。12月に2年10百万ドルの契約を結んだラジャイ・デービスは、最近5シーズンのうちの4シーズンで40盗塁を記録しているアンディ・ダークスとレフト守備を分け合うことになる。ルーキーとしての27盗塁から昨年は8盗塁と、4年間で盗塁数が落ち続けているセンターのオースチン・ジャクソンは、新人の年にわずかに5回しか失敗しなかったショートのホセ・イグレシアスと共に、得点が期待される。「みんなは、キンズラー、ラジャイ・デービス、オースチンについて話しをするけど」オースマスは言った。「ホセは、彼らと同じくらい速いんだよ」

オースマスの青信号が、その4人が出塁した時に点灯することで、盗塁数が限られることはないだろう。各駅停車だったタイガースの日々は、過ぎ去ったのだ。「前にここにきた時、僕はミネソタだったけど、この球団はファーストからサードに走っていた」ハンターは言った。「そしてマイク・ソーシアのエンゼルスでも、ファーストからサードへ走っていた。ブラッド・オースマスは、同じ感覚を持ち込むんだろう。とにかくファーストからサードを狙う。巨体の選手であろうと、シングルヒットでファーストからサードへ走るっていうね」

タイガースの新しいチーム構成は、走塁を超えた変化をもたらすだろう。昨シーズンのデトロイトは、球界で7番目に守備が下手なチームだった。マックス・シャーザー、ジャスティン・バーランダーらのアメリカン・リーグで2番めに少ない失点の投手陣を揃えていてもそうだったことを現実だと知れば、より驚きが増すだろう。

今シーズンの守備は、確かにとても良くなる。その理由の1つは、キンズラーとイグレシアス(この春のタイガースキャンプで、彼の先生をしているオマー・ビスケルと並ぶ)による流れるような守備のダブルプレーである。そしてフィルダーがいなくなったことは、リーグで2番めに守備範囲が狭いミゲル・カブレラが、ダイヤモンドの反対側のファーストへ動くことを可能にする。その空いたスペースには、生粋の三塁手であるトッププロスペクトのニック・カステラノスが入ることができる。デトロイトで居場所を探すために、外野に挑戦する日々は、終わった。「マイナーでサードを守るよりは、メジャーで外野を守るほうが良かった」その選択肢を、これ以上隠す必要がなくなったカステラノスは言った。

フィルダーのトレードでオースマスに起こった他のことは、昨シーズンの彼の前任者のジム・リーランドが決して持つことのなかった、ラインアップの柔軟性を与えられたことである。フィルダーは、ファーストか指名打者以外ではプレーすることがまったくできす、それはカブレラが、ほとんどサードでプレー(145試合)しなくてはならないこと、そしてマルチネスが常にDH(139試合)になることを意味する。現在は「交換できる部品がたくさんある」とオースマスが言う様に、相手投手との相性によって変えることができ、それはナショナル・リーグの球場で行われる交流戦で、特に効果を発揮するだろう。それらは、シーズンの早めにやってくる。デトロイトは、シーズンが始まった週にドジャースタジアムでプレーして、直後に続いてサンディエゴのペトコ・パークで3試合が組まれている。 

昨年のマルチネスは、ナ・リーグの球場でわずかに15打席だったが、今シーズンはすぐにそれを上回るだろう。オースマスは、それらの試合で彼をファーストで使う(カブレラをサードに戻す)ことができ、そしてその監督によれば、特に相手が左腕の先発の時には、アレックス・アビラを元のキャッチャーで使うことができる。「うちにはビクターの打撃が、ラインアップに必要だ」オースマスは言った。「彼を5試合も連続で使えないなんてことはありえない」

つまりオースマスの最初のタイガースは、昨年のリーランドとは、かなり違うことになる。より活動的で、よりダイナミック、そしてより柔軟性があるのだ。彼らは良くなるのだろうか? そう、たしかに確実ではない。フィルダーの様な選手の代わりは、フィルダーが不調だったとしても難しい。「プリンス・フィルダーがラインアップにいないってことは、100打点を失うことなんだ」オースマスは言った。

デトロイトに、もっと良くなる必要がなかったというのは事実である。ワールドシリーズに勝てなかったことに対して、欠点に焦点を当てて、次は違う結果を残すためにどうするのかを説明することは、チームにとっては儀礼的なものに過ぎない。そして昨年のタイガースの場合、プレーオフで経験の少ない環境でプレーした中で、単に運が悪かっただけである。「彼らは、勝つためのチームを作っていた」ライバルチームのGMは言った。「ただ、それができなかっただけだ」

スポーツのプレーオフに関する純然たる事実の1つは、最終的な勝者は、常にベストなチームとは限らないことである。時にはそうなるが、時にはそうならない。ギリギリの試合の中では、時に不幸な出来事が方向を変える。ボストンの警官を賞賛するセレモニーがなければ、昨年のタイガースがチャンピオンでも不思議ではなかった。

ドンブロウツキは、フィルダーの存在感がもたらす全体的な結果、そして彼がワールドシリーズをふたたび狙うための貴重な戦力であると自信を持っていたことからも、おそらく彼を手放したくなかった。ほとんどのGMはそんな方法を取らないが、ドンブロウツキには、それをするいくつかの理由があった。その1つは、お金である。彼らがフィルダーのためにテキサスに30百万ドルを送ろうとも、タイガースは、サイ・ヤング賞投手のマックス・シャーザー(彼は今シーズン後にフリーエージェントになる)と、ミゲル・カブレラ(2015年後にフリーエージェントになる)のために必要になるかもしれない資金のために、多くない資金の中から76百万ドルを切り詰めたのだ。

そのアイデアは、チームをできるだけ多くの回数、プレーオフトーナメントに導き、最終的にトロフィーをつかめるかもしれない。ドンブロウツキは2014年だけでなく、それ以降も、これらのことを視野に入れながらも、総年俸を切り詰める必要が有ることを理解している。キンズラーとフィルダーのトレードは、可能な中のベストな方法で、彼がそうするのを可能にした。変化があっても、それでもチームが勝てるようにするのだ。このトレードを行った両チームが、10月下旬にふたたび、ワールドシリーズを賭けて対峙することがあっても、私は驚かないだろう。

参考記事:With one move, Tigers reinvent themselves on offense and defense Ben Reiter SI.com