現在残っているフリーエージェントでもっとも注目されているのは、私たちのほとんどが実際に投げる姿を見たことがない、日本から来る選手である。

その田中将大は、珍しくこの時期まで決まっていない選手が多い中で、優勝争いを狙うチームと再建中のチームのいずれにも魅力的な、わずか25歳でありながらローテーションを一変させる可能性を持つ投手である。それ故に田中が動くことができる範囲はとても広い。そして彼が先週アメリカに来たことは、すでに多くのチームが彼を必要であると表明している中で、1月中旬の締切日に向けて、より注目を高めることになった。

私たちは、田中の性格や望み、そして彼が好きなことについて何も知らないために、どのチームに彼が行くのかを予想するのは難しいことである。しかし私たちは、メジャーリーグの現状については理解しているので、それを基にした予想をすることはできる。そしてここに、MLB.comのコラムニストたちの予想を紹介しよう。

マーロン・アンダーソン:カブス
セオ・エプスタイン球団社長には資金がある。そしてもし彼らが、数年以内に優勝争いをするという計画があるのなら、ファンを呼ぶことができるNo.1の選手が必要である。

マイク・バウマン:ヤンキース
ニューヨーク・ヤンキースは当然の見方として、田中将大のアメリカでの新しい所属先として早くから挙がっていた。

結局のところ、ヤンキースには資金があり、その資金を費やすという実績があり、先発ローテーションを強化するという、現実的なニーズがある。

アレックス・ロドリゲスが、メジャーリーグの薬物防止プログラムに違反したことで2014年シーズン全体を出場停止となった現在、ヤンキースには25百万ドルの資金の余裕ができたことになる。それはA-Rodの2014年の年俸だ。ロドリゲスはさらに、インセンティブで数百万ドルを受け取ることができただろう。

ロドリゲスは仲裁委員会に異議申立てをしたことで、211試合の出場停止が減ることになったが、それでもフルシーズンの出場停止である。そしてヤンキースは、それが覆される心配をする必要は、ほとんどない。連邦裁判所はこれまでも、繰り返して仲裁の結果を尊重しているからだ。

田中の争奪戦は、さらに厳しくなるだろう。その右腕はフリーエージェント先発投手の中でも、ずば抜けていると見られている。資金が豊富で、ニーズも豊富な他のチームも、獲得に動くだろう。

しかし田中の争奪戦でヤンキースを負かすのは難しい。彼らには意味があり、動機がある。そして彼らには、2014年シーズンのために25百万ドル以上の資金が加えられた。したがって田中は、ヤンキースに行くだろう。

アンソニー・キャストロビンス:マリナーズ
田中はとても若く、彼への投資はとても長い目で見ることができる。このことでその興味は、2015年以降のチーム作りの資金を確保するために、エプスタインの下でフリーエージェントに対して考えられないほど倹約しているカブスの様なチームから、冬の間にお金を使いまくるいつものMLBチームまでの広い注目を集めている。

しかし最終的に私は、この状況がしっかりと計画的に資金を用意することができるところに落ち着くと思っている。そして本当に多くの田中の獲得に動いているチームの中で、ヤンキースとマリナーズが、必要なだけの資源をしっかりと持っていると私は見ている。

伊良部秀輝と井川慶の失敗で用心深くなっているヤンキースは、それが理由で2年前のダルビッシュ有の入札に積極的ではなかった。そしてもしかしたら、いま彼らは、それを後悔しているかもしれない。彼らのニーズは、長年その左腕を酷使してきたCC・サバシアを先頭とするローテーションを強化することで、それは必須である。したがって私は、彼らの獲得への行動は、更に強くなっていくと予想する。

しかし私の本心は、田中が契約するのはマリナーズだと言っている。それは西海岸であるという地の利と、メジャーリーグにおける岩隈久志を含めた日本人選手の一貫した成功の歴史と、ポスティングのタイミングが理由である。マリナーズはすでに、ロビンソン・カノと契約するという大仕事を成し遂げているが、それで補強が終了であるすれば、ほとんどの人は、彼らのロスターを評価しないだろう。フェリックス・ヘルナンデスと岩隈久志の後ろに田中を据えることは、厳しい地区において、ただの成り上がりから間違いのない優勝候補になる可能性を秘めている。そして私は、彼らがその立場をつかむこのチャンスを、逃さないと考えている。

ジム・デュケット:ヤンキース
MLBのどのチームよりも、彼らは彼を必要としている。そして彼らは、彼にピンストライプを着させるために、全力で挑むだろう。

リチャード・ジャスティス:ヤンキース
ヤンキースに間違いないし、そうでなければならない。他はあり得ない。というよりも、論理的にはそうなる。少なくとも、それが当然な考え方だ。ヤンキースは田中を、シーズンオフの最優先事項としてターゲットにしてきた。そして彼ら自身の黒田博樹以外のフリーエージェント投手の誰に対しても、わずかな興味しか示していない。したがって来シーズンの田中が、他のどこかで投げていることを想像するのは難しい。そしてもし彼がそうすれば、それはシーズンオフ最大の番狂わせになるだろう。

ヤンキースは資金が豊富だが、田中の最終決断は、もっとも高額を提示したチームとの契約には落ち着かないかも知れない。そしてヤンキースは、より魅力的なものをオファーできる。それはヤンキースタジアムにおいて10月に投げる可能性であり、その十分なやりがいに注目せずにはいられないだろう。

もしそれに不確実なことがあるとすれば、それが保証されていないことである。彼がマリナーズに注目せざるを得ないのは、岩隈との友情が理由である。あるいはそれは、仲間のダルビッシュがいるレンジャーズにも当てはまるかも知れない。

ダイヤモンドバックスも高額のオファーをすることができるし、ヤンキースタジアムといったプレッシャーがかかる環境とは違う中で、一流の球団の一員になるチャンスがある。ドジャースについては、あり得ないと言って良いだろう。

きっと田中は、全ての可能性を考えている。25歳の若者が、こんなに多くの魅力的な選択肢を持つことは、滅多にない。彼が重視するであろうことが誰にも分からない中で、ヤンキースで投げるという可能性が、有力になるだろう。

ジェフ・ネルソン:ドジャース
私は田中が、故郷から近い西海岸でのプレーを望むと思っている。球団社長でCEOのスタン・カーステンとネッド・コレッティGMは、少し死んだふりをしているように、私には見える。彼らには資金がある。そして田中を加える事により、彼らはワールドシリーズに、とても近くなることができる。

C.J.ニコイッキー:レッドソックス
この件について、ボストンはダークホースである。しかし2015年のジョン・ラッキーの年俸は50,000ドルで、ジェイク・ピービーとライアン・デンプスターは年をとり、もうすぐいなくなるだろう。クレイ・バックホルツには健康の問題があり、ジョン・レスターは2014年シーズン後にフリーエージェントになる。つまり彼らのローテーションには、長期的な問題があるのだ。そして田中は、その完全な解決策になる。彼らはジャコビー・エルズベリーに100百万ドル近いオファーを出した。つまり彼らには資金があり、長期的に見て彼が必要なのだ。

フィル・ロジャース:マリナーズ
昨年の秋に、田中が東北楽天ゴールデンイーグルスを日本シリーズ制覇に導く前、彼は彼らと伴に、6年間で1シーズンしか勝ち越すことができなかった。ゴールデンイーグルスは仙台を本拠地としているが、そこはリーグでもっとも小さな町で、財政的にも厳しいマーケットである。田中はそれらのことを全て知った上で、そこを気に入っていた。彼はチームと成長できることを気に入っていた。彼がMLBでもっとも注目されて、もっとも批評されて、優勝争いが義務付けられているチームに、今更馴染むことができるだろうか? あるいは彼が、日本のチームの協調の象徴である「和」をその球団で見つけることができるだろうか? 私は、それには時間がかかると思う。

ヤンキースは、田中に最高の条件を提示するかも知れないが、自分が心地よい環境を探している彼を獲得することはできないかも知れない。彼に興味を示しているチームの中で、マリナーズよりもその状況に適しているチームはない。マリナーズでは、ゴールデンイーグルスで2007年から11年に田中を指導した岩隈と再び一緒になることができる。イーグルスの立花陽三球団社長は、エプスタインと長年の友人であり、田中がカブスを評価する時にその要素が絡んでくることは、もう1つの重要なポイントである。しかしカノとの契約に続いて、マリナーズは田中が契約するベストな状況が整っている。

ライル・スペンサー:ヤンキース
ボスであるジョージ・スタインブレナーの名前の下で、ヤンキースは田中を取り逃すことができるだろうか?そんなことはできない。

もし彼らが、私たちが育ってきた時と同様に、悪名高く、自惚れ屋で、嫌われ者で、愛されるヤンキースならば、彼らはチャンピオンを狙うことができるローテーションを作るための努力を惜しまないはずである。贅沢税の心配? そんなことは、第1の優先事項ではない。もしドジャースがそれを恐れていないのなら、なぜヤンキースが恐れる必要があるのだろうか? 彼らはジョージが牛耳るヤンキースなのだ。金持ちの考えることは違う。そして球界において、ブロンクス・ボンバーズよりもお金持ちがいるだろうか?

レッドソックスが、現在のワールドシリーズ・チャンピオンであることだけでも、十分な理由になる。そしてマリアノ・リベラの代わりの問題と、デレク・ジーターが完全復活するのかの問題もある。ファンは落ち着かない。ヤンキースは大きなことをするために、思い切る必要がある。

確かにボストンを出たジャコビー・エルズベリー、そしてブライアン・マッキャンとカルロス・ベルトランを獲得したことは素晴らしいことである。ヤンキースには、強力なラインアップが戻ってくる。しかし田中は、上位の先発投手という足りない部分を補う存在であり、そこには良い手本となる兄貴分の黒田博樹がいる。そこにすべてがある。それらのことを考えれば、田中がピンストライプを着ないと考えるほうが、難しいことである。

参考記事:Where will Tanaka land? It's anyone's guess MLB.com