ある選手を祝福するためにチームメイトがグラウンドに出てくることで、メジャーリーグの試合が完全にストップすることは滅多にない。しかし8月21日のイチロー・スズキに起こったことは、まさにそれだった。

ヤンキースの本拠地で行われた地区のライバルのブルージェイズ戦で、初回にスズキは、R.A.ディッキーからサードのブレッド・ローリーのダイビングを抜けるライナーを放った。イチローにとっては、それがプロキャリアで4,000本目の記録となるシングルヒットである事実を除けば、特別なことはなにもなかった。

観客がスタンディングオベーションで讃え、彼のチームメイトが一塁で祝福することで、試合は一時的に中断した。ヤンキースのダグアウトからは、カーチス・グランダーソンが真っ先に飛び出して、イチローとグラウンド上でハグを交わした。

「僕のせいで試合が中断して、選手たちが一塁に来てくれた」当時のイチローは、通訳を通して語った。「僕のせいで試合が中断するのは悪いと思ったから、最初はみんなを止めようと思った。だけど彼らが祝福してくれたことは、本当に嬉しかった」

「4,000本っていうのも確かに大切だけど、チームメイトが出てきてくれたっていう事実が、僕にとっては本当に特別なことだった」

スズキは、日本のオリックス・ブルーウェーブの選手として1992年から2000年で1,278安打を積み重ね、そして2001年にメジャーに来てからは、マリナーズとヤンキースで2,742本を記録することで、現在の合計は4,020本になった。

8月21日のディッキーからのヒットで、イチローは、ピート・ローズ(4,257本)とタイ・カッブ(4,191)と並んで4,000本以上を打った3人目の選手となった。それはもっとも高いレベルの米国と日本の合計で達成したものだった。

しかしイチローは、他の2人と並べられることに対して、とても控えめだった。

「この記録は、2つのリーグの記録を足したもので、彼らは1つのリーグだから」イチローは語った。「僕が彼らと同じだってことには、ならないと思う」

それであってもヤンキースのキャプテン、デレク・ジーターによれば、その偉業は確かに、歴史的な1本である。

「とても多いヒットだよ。本当に凄い」ジーターは言った。「それがリトルリーグでの4,000本だって、僕は凄いと思う。彼がキャリアを通して、どれほど安定して活躍しているのかが分かる。メジャーに来てからの短い時間で、彼がどれだけたくさんのヒットを打ったのかが分かる。それをするのは、並大抵のことじゃないから、イチは誰よりも安定して打っているんだ」

イチローの4,000本に続いて、ヤンキースは試合の後半に、ケン・グリフィーJrからのビデオメッセージを流した。彼はマリナーズ時代のイチローの、チームメイトの1人である。マリナーズはまた、その日に声明を発表した。「マリナーズ球団と私たちのファン全員を代表して、今日4,000安打を達成したイチロー・スズキに、心からの祝福を送ります」

「2001年のアメリカンリーグMVPと新人賞を皮切りに、イチローの素晴らしいキャリアがシアトルで始まったこと、そして彼の4,000本のうちの2,533本が、マリナーズのユニフォームを着ていた11年半に打たれたことを、私たちは誇りに思います」

「日本からマリナーズ、そしてニューヨーク・ヤンキースで続くイチローの歴史的な記録は、球界でもっとも偉大な打者の1人としての彼の立場を証明するものです」

そしてイチローは、2013年シーズンのもっとも素晴らしい出来事の1つを、ファンに与えてくれた。

「最初の1本を打った時に、もし僕がみんなに"僕の目標は4,000本を打つことです"って言ったら、みんなは僕のことをどうかしているって思っただろうね」イチローは言った。「そのあと毎年、ヒットを積み重ねて、今こうすることができた。毎日の積み重ねで、こういこうことができるっていうのは、とても大切なことだと思う」

参考記事:Ichiro's 4K milestone among 2013's top moments By Paul Casella / MLB.com