ヒサシ・イワクマがアメリカンリーグ・サイ・ヤング賞に選ばれても、マリナーズファンは驚かない。フェリックス・ヘルナンデスが2010年に、13勝でありながらその栄誉ある賞に選ばれたことを覚えているからだ。

受賞者は、太平洋時間の水曜日午後3時に発表される。

マリナーズで投げることは、強力打線のタイガースやレンジャーズで投げることと同じではない。したがって、日本から来た32歳の14勝6敗は、より価値があると見られなければならない。

イワクマが記録した防御率2.66と219回2/3の投球は、サイ・ヤング賞を争うタイガースのマックス・シャーザーとレンジャーズのユウ・ダルビッシュを上回るものである。

彼は同僚であるヘルナンデスを凌ぐ活躍をして(それだけでも簡単なことではない)、注目に値する安定感を見せた。10年間も日本で圧倒的だった彼は、マリナーズのローテーションでの1年目で、ア・リーグでも最高の投手の1人としての立場を確実にした。

イワクマは、素晴らしい成績を多く残した。ア・リーグ2位のWHIP(チーム記録の1.006)、3位の防御率と被打率(.222)4位の三振・四球比(4.40)とクオリティ・スタート(23)、そして5位のOPS(.630)である。

イワクマはア・リーグ投手で最高の7.0のWARであり、シャーザーは3位の6.7、ダルビッシュは5位の5.8である。シャーザーとダルビッシュの奪三振数はずば抜けているが、イワクマのコントロールは傑出しており、最高のスプリッターは、打者のバランスを崩し続けた。結果的に彼の4.40の三振・四球比は、シャーザー(4.29)とダルビッシュ(3.46)を凌いでいる。

そしてイワクマについては、チーム事情も考える必要がある。彼のチームは79勝91敗で、チーム打率はア・リーグ最低の.237、得点数は12位である。その打線の援護の無さが、イワクマに13もの勝敗がつかない結果となった。彼はそれらの試合で、防御率2.86であるにも関わらずだ。

その6フィート3インチの右腕は、6イニング以上を投げた5回の先発で、自責点が無いにも関わらず勝敗がつかなかったメジャーリーグで2人目の投手となった。ロジャー・クレメンスは2005年のアストロズで、同じ不運に見舞われている。

イワクマは6回も8イニングを投げているが、それらの試合の防御率が1.69にも関わらず2勝0敗で、4試合で勝敗がつかなかった。

もしイワクマに勝敗がつかなかった13試合のうちの6つだけでも勝っていれば、彼は20勝投手となり、タイガースのシャーザーの21勝3敗に並ぶ印象となったはずである。

しかしその冷静なベテランは、その状況や援護の無さに決して挫けなかった。ランナーが得点圏にいる時の彼の被打率は.184で、ツーアウトでランナーが得点圏にいる時には.111になる。

日本のパシフィック・リーグでオールスターに3回選ばれているイワクマは、ア・リーグのオールスターに選ばれ、そしてその後のシーズンも好調を続けた。彼は最後の8先発で4勝0敗、防御率1.62を記録してシーズンを締めくくった。

彼の成功は、投手に有利なセーフコ・フィールドのお陰ではない。彼はマリーズ史上3番目に低いロードでの防御率2.45を記録し、ロードで25イニング連続無失点のままシーズンを終えた。

イワクマはそれぞれ、23回2/3と23回と、20イニング以上の無失点を2回記録したメジャーで唯一の投手である。 

これがメジャーでブレイクしたイワクマの今シーズンである。しかし2009年のワールド・ベースボール・クラッシックで日本の優勝に貢献し、2008年の楽天イーグルスで21勝4敗、防御率1.87を記録して、日本のサイ・ヤング賞である沢村賞とMVPに選ばれた投手にとっては、驚くことでは無いのかも知れない。

参考記事:Dominance makes Iwakuma a logical Cy Young pick By Greg Johns / MLB.com