コージ・ウエハラがクローザーになった時から、レッドソックスのシーズンの流れは変わった。そのベテラン右腕の変幻自在な投球と圧倒的なスプリッターは、試合が9回になった瞬間に、すべての心配事を吹き飛ばした。
その成功は、アメリカンリーグ優勝決定シリーズでも続いた。そしてボストンは、1年で最も大切な試合でウエハラを信用した。ウエハラは決して期待を裏切ることなく、そしてその38歳はア・リーグ優勝決定シリーズの最優秀選手賞に選ばれた。
「僕のことをサポートしてくれた選手やスタッフみんなのお陰です」ウエハラはグラウンドで、通訳を通して言った。それはボストンがタイガースを5-2で降した試合で、最後の打者だったホセ・イグレシアスを空振り三振に獲ってから、間もない時だった。
その瞬間のプレッシャーについて聞かれたそのクローザーは、笑顔で付け加えた「正直に言って、吐きそうでした」
ア・リーグ優勝決定シリーズでウエハラは、6イニングを投げて1勝3セーブ、与えた四球は0で8奪三振、打たれたヒットはわずかに4本だった。彼はフェンウェイ・パークの観客の声援が飛び交う中、セカンド付近で行われた表彰式でMVPトロフィーを頭上に揚げた。
「彼がこの1年間してきたこと、そして特にポストシーズン、アウト4つだろうと5つだろうと、そして今夜のように9回だけでもね。彼がMVPを獲るべき理由は、それだよ」レッドソックスのジョン・ファレル監督は言った。
「(MVPは)彼以外にいないだろうって話していたんだ」レッドソックスのリリーバー、ブランドン・ワークマンが付け加えた。「点を与えないだけでなく、彼は決して試合を投げ出さなかった。彼が最後を締めくくる姿を見るのは、特別だね」
レッドソックスは、ウエハラを獲得したという、信じられないような幸運に感謝している。ウエハラは、セットアップマンとして契約したが、ジョエル・ハンラハンがシーズン絶望の肘の手術を受け、肩を痛める前のアンドリュー・ベイリーが不調だったことで、クローザーの仕事を任された。
日本で先発投手をしていた彼は、フリーエージェントでボストンに来る前に、オリオールズとレンジャーズのブルペンで、いろいろな役目を任されて成功してきた。しかしウエハラが、9回を任される状況になるとは、考えられていなかった。彼はレッドソックスが「熱心に誘ってくれて、誠意を感じた」と語り、そして「とにかく、ここで頑張ろうという気持ちだけでした」と付け加えた。
今シーズンを迎えるまでのウエハラは、わずかに14セーブだっだが、空振りを奪う巧みな技を魅せつけた。レギュラーシーズンの彼は、21セーブで防御率1.09、三振四球比が11.22と圧倒的だった。
わずか2年前にプレーオフの登板で苦戦して、テキサスのワールドシリーズのロスターを外れたウエハラだったが、今回のア・リーグ優勝決定シリーズでは、上手くやってのけた。
第1試合のウエハラは、1回を2奪三振の無失点に抑え、第2試合ではパーフェクトな登板で、ジャロッド・サルタラマキアのサヨナラタイムリーヒットにつなげ、木曜日の第3試合では4つのアウトを奪い、レッドソックスを1-0の勝利へ導いた。
第5試合でのウエハラの仕事はさらに過酷となり、5つのアウトを記録して2つの三振を奪い、アメリカンリーグ優勝決定シリーズの2セーブ目をマークした。
「信じられない。彼は最高に素晴らしいね」 タイガースのジム・リーランド監督は、第6試合の前に語っていた。「彼が契約した時の顛末について、今日たくさんの記事を読んだけど、彼ら自身もたぶん、こうなるとは思っていなかっただろうね」
「だけど時にこうことは起こるし、彼らは奇跡を捕まえたんだ。彼が本当に凄いということに、疑いの余地はない。それに彼は今、おそらくチームで一番重要な選手だろう」
日曜日の第6試合の前のファレルは、最後の6つアウトを獲るためにウエハラを使う可能性を否定しないと言っていたが、彼に必要だったのは3つのアウトだけだった。フェンウェイ・パークのファンの「コージ!」の掛け声のなか、ウエハラはアレックス・アビラを三振に獲り、オマー・インファンテのバントで2つ目のアウトを獲った。
ウエハラはいつも1点しか余裕がない代わりに、3点のリードがあったことで、少し気が楽だったと語った。続くオースチン・ジャクソンが打った打球は、ショートのスティーブン・ドリューがわずかに獲ることができずに内野安打となったが、ウエハラは次のイグレシアスをスプリッターで三振に獲った。
最後のアウトを奪ったウエハラは、マウンドとホームベースの間でキャッチャーのサルタラマキアに抱きつき、叫び声を上げた。そしてレッドソックスのメンバーが彼を取り囲んだ。それは2007年以来のワールドシリーズ進出のお祝いの始まりだった。
「今の気分としては、最高としか言い様がない。それだけです」ウエハラは言った。
参考記事:Unflappable Koji nets ALCS MVP honors By Bryan Hoch / MLB.com