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コージ・ウエハラは、いったいどうやって、こんな活躍をしているのだろうか? それに好調なリリーバーが誰もいない今シーズン、レッドソックスはなぜ、彼を4人目のクローザとして選んだのだろうか?

私は読者のために、信じられないくらいの成績をたくさん集めたが、まずこれらから始めよう。

木曜日の夜を前に、ウエハラのファストボールの平均球速89.2マイルは、10セーブ以上挙げているクローザーの中で2番めに遅い。

しかしウエハラの奪空振り率は36.3%は3位で、彼よりも上にいるのは、カンサスシティのグレッグ・ホランドと、本当にわずかな差だが、シンシナティの100マイル男アロルディス・チャプマンだけである。

なんだって?

「スピードガンなんて、関係ない。彼は並外れた2つの球を持っていて、その両方で空振りさせるんだ」レッドソックスのジョン・ファレル監督は、ウエハラのファストボールとスプリッターに言及した。 

彼は相手を欺く。彼には無駄がない。彼は・・・、そう、これらのすべては、すでに耳にしたことがあるだろう。

しかしこれはどうだろうか。

「正直に言うけど、落ち着いて考えると、あの男は第六感みたいなものを持っていると思う」ファレルは言った。「彼は打者がなにを待っているとか、彼らは振ってくるだろうっていうことを感じ取る。気味が悪いくらいにね。そして彼が選ぶ球は、いつも正しいんだ」

レッドソックスの左腕クレイグ・ブレスロウは、打者が考える前であっても、彼らがなにを待っているのかをウエハラは感じ取ってしまうと、冗談交じりに言った。

レッドソックスのキャッチャー、デビッド・ロスは、さらに一歩進んだ表現をした。

「僕たちは、彼が忍者だって言っているんだ」ロスは言った。「彼は分かっている」

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レッドソックスはウエハラを、6月下旬にクローザーに指名した。それはアンドリュー・ベイリーとジョエル・ハンラハンがケガをして、ジュンイチ・タザワをクローザーにする計画が頓挫した後だった。

その役目を担ってからのウエハラは、33回1/3を投げた。奪三振数は45。与えた四球は2つ。防御率は0.27を誇る。そして1イニングあたりの平均投球数は、わずかに13.0である。

防御率タイトルを狙うのに十分なイニングを投げている投手の中で、1イニングあたりの投球数がメジャーリーグで一番少ないのはレッズのブロンソン・アローヨで、平均14.1である。メジャーリーグ全体の平均は16.3である。

木曜日の夜、彼は21回目のセーブ機会で18セーブ目を挙げ、無失点イニングを26に伸ばし、連続で仕留めた打者は24人になった。試合は延長10回、レッドソックスが9対8でヤンキースを下した。この両チームの対戦は、今週末の間続く。

昨年の12月6日にウエハラと1年4.25百万ドルの契約を結んだ時のレッドソックスは、彼のことをちょっとした贅沢だと考えていた。

その時の彼らには、タザワ、ベイリー、ダニエル・バード、アルフレッド・アセベス、そして後にハンラハンとトレードされたマーク・メランコンらの右腕のリリーバーがいた。

「どうしても補強しなくてはならないところではなかった」レッドソックスのベン・チェリントンGMは言った。「だけど私たちは、彼のことを本当に気に入っていたから、とにかく彼を取ろうと決断した」

ウエハラの代理人マーク・ピーパーは「多くの」チームが、彼のクライアントに対する問い合わせをしてきたと言った。ウエハラが最初に所属したメジャーリーグチームのボルチモア・オリオールズは、そのうちの1つだ。しかしピーパー曰く「ボストンが絡んできたら、彼らは話を終わりにしたも同然だった」

レッドソックスは、ウエハラのストライクを投げる能力に注目した。バード、左腕のアンドリュー・ミラーとフランクリン・モラレスらの彼らのブルペンは、たまにコントロールを失うことで知られている。

レッドソックスがシーズンを進めるにあたっても、ウエハラを獲得したのは良いことだった。

セットアップマンから突然クローザーになった38歳のウエハラは、恐らくチームでもっとも必要不可欠な選手である。

それでもこれが偶然だと考える人のために、もう一度考えてみよう。

2011年のウエハラも、似たような状況にいた。それはオリオールズが右腕のトミー・ハンターと、そしてなんと、一塁手のクリス・デービスと交換で彼をテキサスにトレードする前だった。

5年間のメジャーリーグでウエハラは、275回を投げて防御率2.49、三振と四球の比率は、ほぼ10:1である。

2008年シーズンが終わった後、2人の日本人投手がフリーエージェントとして獲得可能だった。1人は右腕のケンシン・カワカミ、彼はアトランタと3年22百万ドルで契約した。そしてもう1人がウエハラで、彼はボルチモアと2年10百万ドルの契約を手にした。

後にオリオールズの球団社長になるアンディ・マクフェイルは、後にチームの国際スカウト部長になるジョン・ストックスティルが推薦するウエハラを信用した。

「ジョンは、ウエハラの方をより気に入っていた」マクフェイルは言った。「私たちは、彼は最終的にブルペンだと考えていたんだけど、彼と契約する条件は、先発投手でということだった」

「それは彼からの条件であり、彼の代理人からの条件だった。そして私は、オリオールズで1年目だった。私たちはフリーエージェントの投手を獲得することも、借りることも、盗むこともできていなかった。彼らを獲ることができなかったから、我々は他を探すしかなかったんだ」

日本の読売ジャイアンツの10年間で276登板をしたウエハラは、うち205回は先発投手としてだった。彼がオリオールズと結んだ最初の契約の中には、先発数と投球回数がベースで増えていくパフォーマンス・ボーナスが含まれていた。彼は'09年シーズン絶望となる肘の腱のケガをして、その試みが終わるまでに、12回の先発をした。

翌年彼は、リリーバーに転向した。

2010年8月2日にオリオールズの監督に就任したバック・ショーウォルターは、ウエハラはマリアノ・リベラに匹敵すると言った。ショーウォルターは、1995年のヤンキースでリベラの監督だった。

「彼が打者をやっつける姿は、私にモーを思い出させた」ショーウォルターは語った。

それに、彼の試合の終わらせ方もである。

「切れの良いナイフだ。ゆっくり止めを刺すのではなくてね」ショーウォルターは続けた。「心配なんてまったくない。それは監督だけでなく、チーム全体がね」

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ウエハラのスプリットフィンガード・ファストボールは、どれくらい凄いのだろう?

木曜日の試合前までの彼のスプリッターの奪空振り率は43.4%で、それはシカゴ・カブスのジェフ・サマージャの48.4%についで、メジャーリーグで2位の高さである。

レッドソックスのスカウトであるエディー・バーンは、ロサンゼルス・エンゼルスのスカウト部長をしていた2006年にウエハラの獲得に動いた。ウエハラのスプリッターは、スカウトが使う20-to-80スケールで最高の値だと彼は言った。

「サッターを覚えているかい。彼は革命的な投球をした」バーンは、スプリッターを広めて殿堂入りしたリリーバーのブルース・サッターに言及した。「それとは違う。だけど最高の球だ」

ほとんどの投手が投げるスプリッターは真ん中低めで、その自然な動きによって、打たれる可能性があるとレッドソックスの控え捕手であるロスは言った。

一方でウエハラは、その球をホームベースの両脇に投げて、そして配球によって打者のバランスを常に崩している。

「彼と左の強打者が対戦したとするだろ」ファレルは言った。「彼は外角高めにファストボールを投げる。(もし言うのなら)"これをよく見ておけって"ってね。その後スプリッターを2球続けて投げる。そして彼らにそれをよく見せたら、88マイルがくるんだ」

そして彼に弱点はないのだろうか?

うーん、聞いてみよう。

「コージの能力には疑問はないけど、耐久性だね」オリオールズの元幹部であるマクフェイルは言った。

今シーズンのウエハラは、2011年にオリオールズとテキサス・レンジャーズで記録したキャリアハイの65イニングを超えると予想される。メジャーリーグで最初の2年だった2009年と'10年の両年で、肘の問題によって故障者リスト入りしたことを考えれば、悪いものではない。

レッドソックスは、2010年シーズン後にフリーエージェントになったウエハラとの契約を検討したが、彼の肘に「懸念」があったとチェリントンは明かした。そのチームは、ウエハラがより実績を積んだ2年後に彼を獲得したことに満足しているが、彼へのケアは忘れていない。

今シーズンのウエハラが、3日連続で登板したのは1回だけである。そしてオールスター休暇以降に彼が連投したのは1度だけだ。そしてファレルは今シーズン、ウォームアップしたウエハラが試合で投げなかったのは、3回だけだと言った。

「彼との会話の中で、以前に肘を傷めたのは、しばらく投げなかった後に投げた時だったと言っていたんだ」ファレルは言った。「彼は(より定期的に投げることが)腕を良い状態に保っていると感じている」

今のところ、順調である。ファレルはここ2週間で、ウエハラに2回も4アウトセーブをさせているが、ウエハラがその1回目で投げたのはわずかに15球、2回目は17球しか投げていない。

彼の効率性を助けているのは対戦している打者で、彼らは今シーズンのウエハラに対して、打率はわずか.134でOPSは.416である。ウエハラよりも10イニング少ないリベラは、被打率.246で、OPSは.643である。

「彼が止まってしまうことについて心配をしていないのかって、みんながいつも聞いてくる」チェリントンは言った。「どんな投手にだってリスクはある。だけど彼は、これまでよりも良い状態だと言っている。彼は毎日、200フィートを超えるくらいの遠投をしている。状態が悪い選手は、そんなことはできない」

チェリントンはベイリーを獲得するために、外野手のジョシュ・レディックと2人のマイナーリーガーをトレードした。そしてハンラハンと内野手のブロック・ホルトを獲得するために、外野手のライアン・スイーニーとメランコン、そして3人のマイナーリーガーをトレードした。

それをしたGMは、彼の最終的なクローザーが、4.25百万ドルで契約した男になるとは知らなかった。そしてそのウエハラは、4.25百万ドルのべスティングオプション行使の条件となる55回の登板を果たし、来年も残ることになった。

その教訓は、「クローザーを探す時に、大金や若手を使わないこと」である。

ときにその男は、4番目のドアの影に隠れているのだ。

参考記事: Uehara's unlikely rise to BoSox closer Ken Rosenthal FOXSports.com Senior MLB Writer