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今春のミルウォーキー・ブルワーズ・キャンプのノリチカ・アオキがより馴染んでいるのは、簡単に見て取れる。

アオキは、メリーベール・ベースボール・パークの環境に慣れただけでなく、クラブハウスで彼の周りに集まる選手に、言葉の壁を超えて笑顔を振りまき、普段からリラックスしている。

「同じ景色で同じ環境だけど、僕が慣れたってところが違うね」アオキは言った。「やりやすくなっている。昨年ここにきた時は、誰も知らなかったから」

1年前のアオキは実際に、新天地に来たお客さんだった。そのきゃしゃな外野手は、日本のセントラル・リーグで7年間プレーした後、メジャーリーグで自分の実力を試そうと決意した。彼の決意は固く、大幅な減俸となる2年25百万ドル、2014年は球団側のオプションという控えめな契約を受け入れた。

アオキになにを期待して良いのか分からなかったブルワーズは、彼を控えの外野手にした。その慣れない役目を与えられた彼が、チームの運命に大きな影響を与えるとは思えなかった。

しかし5月初旬に、一塁手のマット・ギャメルが膝のケガで離脱したことが転機となった。その隙間を埋めるために、コリー・ハートがライトから一塁へ移り、アオキは外野のレギュラーを担えると証明するチャンスを得た。

「昨シーズンが始まった頃の彼は、代打でとても良い仕事をしていた。そのことがあったから、ギャメルがダメになった時、彼に"外野で毎日プレーして、実力を見せて欲しい"と言うのは、簡単なことだった 」ロン・レーニキー監督は当時のことをそう語った。

左打者のアオキはレギュラーになって発奮し、メジャーリーグに適応して、スキルを魅せつけた。最終的に151試合で打率.288、37本の二塁打、10本塁打、30盗塁、81得点と、素晴らしい結果を残した。

一塁でプレーしたハートは期待以上で、アオキはライトで毎日プレーできるところを見せた。そのことで、2013年のブルワーズの計画は変わった。アオキとハートは、それらのポジションのレギュラーになるはずだった。しかし1月後半にハートが膝の手術を受け、5月までラインアップに戻ってくることができないことで、この青写真は崩れ去った。

「昨年の彼は、本当に良い年を過ごした」レーニキーは、アオキについて言った。「もっと良くなることを期待している。だけど去年の彼は本当に頑張ったから、私はとても嬉しかった。新しい国に来て、学ぶことがたくさんあったんだから、辛かったと思うよ」

「私たちはすでに知っているから、彼が証明しなくてはならないことは何もないんだ。だけど彼は準備をしてきた。そしてほとんどのメジャーリーガーは、決して満足しない。彼らは毎年、もっと良くなろうと努力する。ノリも確かにそういった選手だと思う」

ブルワーズでの2年目に向けた31歳のアオキの心構えは、正にそれである。過酷なメジャーリーグ・シーズンを1年経験したアオキは、冬の間の厳しい練習で体を作り、強靭な肉体で現れた。

ブルワーズで最初の日本生まれの選手であるアオキは、ライトのポジションを勝ち取る必要はないが、それを当然のこととは思っていない。メジャーリーグのレギュラー選手に必要な、謙虚さと礼儀正しさをもつ彼は、キャンプを適当に流すことなど、考えていない。

ワールド・ベースボール・クラッシックで2度チャンピオンになった日本チームでのプレーを辞退したことは、アオキがより良い選手となってブルワーズに専念したいことの証明となった。

「僕はもっとできると思っている」アオキは通訳のコウスケ・イナジを通して言った。「(昨年は、)良い時も悪い時もあった。最終的には、貢献できたと考えても良かったのかもしれないけど、僕はまだそう思っていない」

「それが簡単にできるとか、そんなことは思っていない。常に自分自身にチャレンジしていきたい。僕は自分をレギュラーのライト選手とは思っていない。今年は、なにを期待されているのか分かっているから、多少は楽かもしれないけど、実際はそんなことはないよ」

チームのライト選手として、信頼できる一貫した存在となったこと以外に、アオキは他の問題も解決した。リッキー・ウィークスが足首の手術からの回復に半年を要して、 続いたスランプと戦っていた時に、レーニキーは、アオキをリードオフに据えた。彼は.355の出塁率でそれに応えた。

それどころかアオキは、厳しい球をファウルにして、ヒットか四球になるまで、投手に投げさせるところを見せた。彼は588回打席に立ち、わずか55回しか三振せず、左投手に対する打率は.270を記録した。

「彼は打つよ。バットスピードがあるから」レーニキーは言った。彼はアオキを1番打者にして、ウキークスをその後にする計画だ。「98マイルを投げたって、彼は打つんだ」

「彼がこの先、どこまで良くなるのか分からないけど、昨年の彼は本当に良かった。彼をアウトにするのは大変だよ。彼を相手にどうやって守れば良いのか、私には分からない」

彼が文化的な適応をほとんど完璧にやってのけたのも称賛に値するが、アオキはメジャーリーグでプレーできることを証明したことで、チームメイトから真の尊敬を勝ち取った。結局はそれが、いつでも、本当のテストになる。

「彼は、みんなの期待を超えた」レフト選手のライアン・ブラウンは言った。彼はアオキと同じネズ・バレロを代理人としている。「ここに来た彼が、誰かにどの程度期待されていたのか、僕は知らないけどね」

「彼は信じられないような年を過ごした。レギュラー選手として、彼のやり方で貢献した。守備でも、打撃でも、走塁でも、信じられないくらい安定していた。それは僕には、本当に印象的だった」

「言葉や習慣が分からないところに来て、そういった文化的な適応をすることを、僕には想像できない。野球をすることや、僕たちのルーチンは、こことあっちでは確かに違う。昨年の彼は素晴らしかったし、今年もう一度、彼と一緒にプレーできるのは、本当に嬉しい」

それをやってのけたアオキは今春、野球に集中している。彼は一日400スイングするという風変わりな練習を、2012年の初めに減らすことにした。生活しながら学ぶことは、日本で3回首位打者に輝いた選手の新しい生き方になった。

「良かったことも、悪かったこともあった」彼は言った。「満足はしていない。野球のすべてのことについて、もっと良くなりたい。個人的な目標もいくつかあるけど、僕の最大の目標は、チームに貢献すること」

参考記事: With one year under belt, Brewers' Aoki turns focus to game BY TOM HAUDRICOURT MILWAUKEE JOURNAL SENTINEL