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14番ホールのウォーターハザードの辺りに、ワニがいるのが目に入った。眠そうに威嚇するその姿を見て、本当に気持ちのよい午後のゴルフを一時中断したと、イチロー・スズキは語った。

さらにイチローは、借りている家の近くにある池の周りを散歩する時は、ぶらついているワニがいないかを常に入念にチェックしている。しかしそれは、日課であるヤンキースの練習施設まで来るのに使う、混雑した道路を運転するのとは比べ物にならない。

これがフロリダ・スタイルのスプリング・トレーニングである。アリゾナでマリナーズと一緒に3月を数年間過ごした後のイチローは、いろいろなことがあるヤンキースでの最初のフルシーズンを過ごすための、いろいろな方法を探している。いろいろなことの一つは球場ではない場所で起こった、これまでのところ一番忘れることのできない出来事だ。

「日本では、自分の安全みたいなことを意識しなくて良いから」イチローは通訳のアレン・ターナーを通して言った。「ここでは、注意しなくてはならないことがあって、フロリダでは特に、自分を守るために周りに注意しなくてはならない」

カーティス・グランダーソンとマーク・テイシェイラをケガで失った今春のヤンキースにとって、それはとりわけ真実である。彼らはおそらく、3月2日の午後に起こった3台が関わる事故でイチローのスポーツ・ユーティリティ車が潰れた時、彼がそのケガ人のグループに入らずに済んだことを本当に感謝している。

「どんなところだって慣れるのには時間がかかるけど、運転に関しては、事故のあとだけに本当に怖いよ」イチローは言った。「 (土曜日の)夜だって、後ろがほとんどぶつかりそうだったもの。彼は急ブレーキを踏んだけど。周りの車がスピードを出し過ぎるとかそんなようなことで、自分じゃどうしようもないことが何回かあった。本当に怖いよ」

その後イチローが、ジョージ・M・スタインブレナー・フィールドの角のロッカーを避難所にしたのは、当然のことである。そして今冬ヤンキースと2年13百万ドルで再契約したイチローは、かつてバーニー・ウィリアムズが、春の間にギターをかき鳴らすために借りていた家を選んだ。

イチローが選んだアイテムは、バットだ。それはその外野手が、野球の球が当たった時に予想外のダメージを受けないように、緩衝材にくるまれた特別なケースに入れられて、町から町へ運ばれている。

イチローのロッカーは入り口から遠くない所にあり、おそらく彼が一番快適な場所であるバッティング・ケージに向かうときには、デレク・ジーターのロッカーの前を通り過ぎる。そこはしばしば、イチローが使っているのしか聞いたことがないジーターのミドルネームを交えたユーモラスな挨拶である「ハロー、サンダーソン」という声が聞かれる場所だ。

「僕がここに来て思ったのは、去年のシーズンもそうだったけど、ヤンキースではそれぞれが、自分で管理することを認められているから、自分のすることに柔軟性が与えらている」イチローは言った。

「彼らはそれを期待していて、あとはそれをするのか、しないのかのどちらかなんだ。たぶん何人かは決められたことをしているし、そうすることになっているんだろうけど、もし無理をしたくなかったら、そうすることもできる」

彼はその信頼を得て、そしてヤンキースはイチローが約束したことについて、不安になる理由はなにもない。イチローは7月に、マリナーズからトレードでニューヨークに移籍してきた。そしてヤンキースで67試合に出場し、打率.322、5本塁打、27打点、14盗塁を記録した。そしてシーズン終了後に日本に帰った時でさえ、彼は新しい環境で生き返ったと指摘された。

「僕が言われたことで一番多かったのは"楽しんでプレーしているように見える"だった」イチローは言った。「みんなから一番多く言われたのは、たぶんそれ。これまでも野球を楽しんでいなかったわけではないんだけど、彼らから見たら、僕がニューヨークで本当に野球を楽しんでいるように見えたんだろうね」

それには十分な理由がある。マリナーズでの終わりの頃のイチローがクラブハウスを見渡した時、そこには若くて、経験の少ない選手がほとんどで、球団が将来に本気で優勝争いを見据える時、彼の居場所はないように見えた。

そしてヤンキースでは、イチローの名前は、ジーター、アンディ・ペティット、そしてマリアノ・リベラといった実績のあるベテランに混ざる。これらの選手たちの実績は、イチローに負けず劣らずのものだ。

フロリダでの生活に慣れるチャレンジは、おそらく進行中だ。しかしヤンキースにいる限りイチローは、本当に楽しむことができる場所を見つけたようだ。

「前にも言ったけど、ここは理想的なクラブハウスで、理想的なチームなんだ」イチローは言った。「本当に強くて本当に良いチームっていうのは、こういうチームになるんだろうって、ずっと思ってきた。去年、それがここにあると思った。僕が望んでいたその理想が、ヤンキースのクラブハウスにあった。それは僕にとって、大きなことだって言えることの一つだと思う」

参考記事: Ichiro at home with Yanks, adjusting to Florida By Bryan Hoch / MLB.com