ニューヨーク・ヤンキースがアレックス・ロドリゲスとの契約を破棄する。それはとてつもなく難しいことである。彼はその前に、ドーピングをしたことによる出場停止処分を受けなくてはならないだろう。それはロドリゲスだけでなく、今週パフォーマンス増強薬(PED)のスキャンダルに巻き込まれた他の選手たちにとっても事実である。

フロリダ州コーラルゲーブルズのバイオジェネシス・クリニックとアンソニー・ボッシュが、ロドリゲスとつながっているという証拠をマイアミ・ニュータイムズが報じたが、メジャーリーグ・ベースボールが彼を出場停止処分にするには、それだけでは不十分である。

ある選手がドーピングをした、あるいはしようとしたという圧倒的な証拠があれば、検査で陽性にならなくても、MLBは選手に処分を科すことができる。それは「検査不要の陽性」と呼ばれる。しかしロドリゲスとそのクリニックがつながっていることを示したその書類は、それらを直接的に知っている人間によって、宣誓のもとで証言してもらう必要がある。それができるのはボッシュ自身であるが、彼は弁護士を通じた短い声明で、悪事を働いたことを否定している。

連邦検事からの圧力がない状況でボッシュに、その書類や選手たちとのつながりについて聴聞会で宣誓供述させるなり、宣誓供述書を提出させるのは非常に難しいだろう。MLBがロドリゲス、メルキー・カブレラ、バートロ・コロン、ジオ・ゴンザレス、ヤスマニ・グランダル、そしてネルソン・クルーズといった記事の中で関係があるとされた全員を出場停止にするには、目撃者や処方箋、それか発送記録といった、彼らとの直接的なつながりを示すものが必要だ。MLBは薬物使用が疑われる選手たちから話を聞こうとしたが断られたと、情報提供者は言った。

カブレラ、コロン、そしてグランダルは昨シーズン、検査で陽性となり50試合の出場停止処分となった。彼らがPEDやそれに類するものを使用したとMLBが証明できれば、彼らは2度目となるので、100試合の出場停止となる。それにはどんな更なる事件であっても、前回の違反とは別件であると証明する必要がある。

先例がある。マニー・ラミレスは、ボッシュの父であるペドロが書いたヒト絨毛性ゴナドトロピンの処方箋をMLBが発見したのち、2009年に出場停止処分となった。

しかしそれがMLBのルール上の問題なのか、または犯罪になるのかにかかわらず、確証を得るのは簡単なことではない。連邦検事は10年前の巨大なステロイド・スキャンダルの中心となったバリー・ボンズとBALCO研究所のつながりを示す書類を手に入れたが、これらの証拠を証明できる唯一の人間、ボンズの友人でパーソナル・トレーナーのグレッグ・アンダーソンは、ボンズに不利な証言をすることよりも法廷侮辱罪で収監されることを選んだ。スーザン・アイルストン判事はアンダーソンの証言なしに、その証拠を採用しなかった。それでも連邦審査会はボンズを1件の偽証で有罪とした。しかしMLBはボンズを処分できなかった。彼が使用したのは、ルールが有効になる前だったからだ。

政府が目撃者を得たとしても、その目撃者が信用される保証はない。連邦検事はロジャー・クレメンスのトレーナーだったブライアン・マクナミーの協力を得た。彼はクレメンスのPED使用について詳細に証言したにもかかわらず、陪審員は彼の証言を信用しなかった。そしてクレメンスは無罪放免となった。

ロドリゲスが出場停止になったとしても、ヤンキースが契約を破棄できるとは思えない。労使協定には、PEDの処方と使用について、1回目は50試合の出場停止、2回目は100試合の出場停止、3回目は生涯出場停止と明記されている。そしてチームはPEDを使用した選手対し勝手に処罰を科すことができないとの言葉が記載してある。法律の専門家によれば、その文言に打ち勝つためには、特別な事情がなくてはならない。 

参考記事:MLB discipline in scandal not a given By T.J. Quinn | ESPN.com