無題マリナーズ以外のユニフォームを着て、初めてメジャーリーグの打席に立つために、イチロー・スズキはホームプレートの前に用心深く進んだ。何が起こるのか、彼には予測がつかなかった。

セーフコ・フィールドに集まったファンは、新しいチームでの彼の成功を願って声援を送った。そしてそれは、何かを発散させているかのようだった。最高を追い求めて自由になったイチローは、ヤンキースが4-1でマリナーズに勝利した試合で、センター前にシングルヒットを打った。

「最初の打席に向かうときは、心配だった」イチローは言った。「だけどスタンディングオベーションをもらって、本当に安心した。今日は特別な日だった」

月曜日のイチローは、新しいチームで4回打席に立ち、1つのシングルヒットと盗塁で脇役になった。その試合のスターはヒロキ・クロダで、彼は力強い投球で7イニングを1失点で抑え、ニューヨークの連敗を4で止めた。

「連敗中だったから、勝つことが必要だった」クロダは言った。「イチローが加わったこともあって、今日の勝利は大きかった。僕とチームにとって本当に良かった」

確かにそれは、10回オールスターに選ばれた選手が、ヤンキースの遠征用のグレーのユニフォームに袖を通すことで、イチローのシアトルでの輝かしい日々が終わりを告げた日だった。その38才がクラブハウスを移ったことは、明らかにその日の一番の話題だった。

「イチローはスーパースターだ」アレックス・ロドリゲスは言った。彼は今日の勝利の中で、ソロホームランを打った。「彼は賑やかなところが好きだ。ニューヨークには、そういうところがたくさんある。僕は彼がニューヨークを気に入ると思うし、ニューヨーカーも彼を気に居ると思う」

シアトルでもそうだった。イチローを讃えに集まった29,911人のセーフコ・フィールドのファンは、疑う余地なく、そのほとんどが、その日の早くに、そのスターとニューヨークの投手D.J.ミッチェルとダニー・ファーカーがトレードされたのを知って驚いた。イチローはバッターボックスに入る前にヘルメットを脱ぎ、頭を下げて声援に応えた。

「確かに大変だった。僕には大変な日だった」イチローは言った。「今僕は、野球に集中できる。”おい、明日はサッカーだ”って言われるのも厳しいけど。だけど野球だし、僕はこれから試合のことだけに集中する」

イチローはマリナーズの先発ケビン・ミルウッドから、1球目のストライクの後にシングルヒットを打った。ヤンキースのジョー・ジラルディ監督は、取り敢えず作ったグリーンライトのサインを使い、二塁への盗塁を許した。二つの内野ゴロでその回は終わったが、ジラルディはどうすればイチローがインパクトを残せるのかが既に解ったと言った。

「うちに来た選手が、すべきことができると判れば、ラインアップを変える」ジラルディは言った。

ジラルディは、イチローの名前をラインアップカードに書き入れる前に、なぜ彼が8番なのかを説明したと言った。

「彼は素晴らしい。瞬き一つしなかった」ジラルディは言った。「彼は”準備はできている”って言った。そして本当に興奮しているようだった。私たちは、彼が来たことを本当に喜んでいる。彼はいろいろなことができる選手だと思っている」

ヤンキースはミルウッドから7回で3点を奪った。ダメージを与えたのは4回で、マーク・タシアラ、ラウル・イバニェスそしてアンドリュー・ジョーンズがその回にそれぞれタイムリーヒットを打った。

ミルウッド(3勝8敗)は、散発の9安打を浴び、与えた四球は2つで5つの三振を奪ったが、彼はクロダに投げ負けた。クロダは2連勝で、6月25日以来の6先発で無敗だ。

「彼は本当に、本当に良いね」ジラルディは言った。「4月の彼は、ここでがんばろうと思って、自分にプレッシャーをかけ過ぎていたんだと思う。彼は落ち着いてきていて、凄く良くなった」

クロダに3安打に抑えられたマリナーズの唯一の得点は、3回だった。ダスティン・アクリーは四球で出塁した後、盗塁でセカンドへ進み、ジョン・ジェイソのシングルヒットで得点した。イチローの送球は、一塁線から逸れた。

ライトに立っていたイチローは、胸に”NEW YORK"と書いてあるユニフォームを来ていることに違和感を感じざるを得なかった。少なくともバーニー・ウィリアムスへの敬意から51番を避けて選んだ31番を着た姿は、彼には見えなかった。 

「それに慣れるつもりだけど、暫くかかるでしょうね」イチローは言った。

クロダは107球を投げて9奪三振、与四球1だった。彼はイチローとは、古くからの知り合いだと言ったが、彼らは同じチームでプレーしたことはなかった。そしてスプリングトレーニングで唯一顔を合わせたのは、クロダがドジャースにいた時だった。

「気持ち的に、彼は僕にとって本当に大きなサポートになるでしょう」クロダは言った。「他の日本人選手が来ることは、僕にとっては大きなプラスになる。だからこれは素晴らしいことになると思う」

ヤンキースは違う理由から、同じ様になることを望んでいる。そのネームバリューはチケット販売の追い風になるが、本当の目的は、怪我でブレッド・ガードナーのシーズンが終わって以来、彼らに欠けているスピードと守備力をイチローがもたらしてくれることだ。

イチローにとってニューヨークは、成熟したチームでの新しいスタートとワールドシリーズでの勝利を意味する。

「僕は彼に、3年くらい笑顔を見ていないって言ったんだ」ロドリゲスは言った。「彼はこれから、素晴らしい時を過ごすよ。ニューヨーカーが、彼のプレースタイルに恋をするって僕は思っている」

メジャーと日本で、合わせて3,812本の安打記録を持つイチローには、確かにこれからも、輝く時が来るだろう。そしてヤンキースは、彼がチームに溶けこむ以上のことをすれば、より満足するだろう。

「僕は勝ちたくてここに来た。このチームが勝つための力になりたい」イチローは言った。「打順がどこであっても、ポジションがどこであっても、僕はチームが勝つためにここに来たんだ」

参考記事:Kuroda's gem helps Yankees win Ichiro's debut By Bryan Hoch / MLB.com | 7/24/2012 2:45 AM ET
http://mlb.mlb.com/mlb/gameday/index.jsp?gid=2012_07_23_nyamlb_seamlb_1&mode=recap&c_id=nyy&partnerId=rss_nyy